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箱根駅伝シード落ち→6位復活のウラ側…早稲田大・花田監督が思い出す“瀬古さんのダメ出し”「それじゃ、足りないんじゃないか?」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2023/01/24 17:30
総合6位でゴールし、2年ぶりにシード権を獲得した早稲田大。アンカーの菅野雄太(2年)
「往路は様々な要素が絡むのでタイム幅は大きくなりますが、復路は単独走が多くなるので予測しやすいんです」
花田監督は、就任してから「1=1、練習=試合の走りができるように」ということを話していた。私はこの数式は単純であるがゆえに、その重要性を見逃していた。ここに神髄があったのだ。
学生のポテンシャル、練習の達成率、レース展開の予想まで含め導き出されたのが設定タイムだ。現実のタイムが想定の幅に収まったということは、花田監督が選手たちの能力を十分に把握していたことを示す。
だから、無理もさせなかった。
「集団になった場合、じっと我慢するように学生たちには話しました。本来、早稲田の選手なら集団の先頭に立ち、前を追うようなレースをするべきでしょう。ただ、今季はそうした攻めの走りができるような練習をする時間が取れなかったので、選手は自重し、我慢して走ってくれました。あまりテレビでも目立たなかったのは、そういう理由もあります(笑)」
瀬古さんのダメ出し「それじゃ、足りないんじゃないか?」
では来年、早稲田が“目立つ”ためにはどんなことが必要なのか。花田監督は明言する。
「このままでは優勝はできませんよ」
直截な物言いに驚く。
「今年のレースで、想定通りのことはできると学生たちは証明してくれたわけです。これから上を目指すなら、学生たちの『俺たちはこんなもんじゃない』という欲が絶対に必要なんです」
1993年、花田監督は3年生の時に総合優勝を経験しているが、その時はチームが欲に満ちていたという。
「城西大学の監督を務めている櫛部(静二)、武井(隆次)も、そしてナベ(渡辺康幸・現住友電工監督)も、みんな区間記録を出す気満々でした。そのためには、普段の練習が重要です。レースで100パーセントの力を出すために、練習メニューを85パーセントでこなす余裕が必要だと思ってました。そのために、生活を見直していく。いまの学生たちもポイント練習だけではなく、つなぎのジョグ、体のケア、治療、あらゆる面でレベルを上げていく努力が見られるようになれば、早稲田は優勝を狙えるチームになると思っています」
指導のベースにあるのは、師である瀬古利彦氏の教えだ。