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箱根駅伝シード落ち→6位復活のウラ側…早稲田大・花田監督が思い出す“瀬古さんのダメ出し”「それじゃ、足りないんじゃないか?」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byYuki Suenaga
posted2023/01/24 17:30
総合6位でゴールし、2年ぶりにシード権を獲得した早稲田大。アンカーの菅野雄太(2年)
「瀬古さんは私たちに『今度のポイントは何をやるか?』と、まずは意見を聞いてくるんです。そこで『5000mを2本で行こうと思います』と答えたとすると、当初は『それじゃ、足りないんじゃないか?』とダメを出されていました。そうしたやり取りを重ね、実際に実力がついてくると、瀬古さんと私の思惑が合致するようになってきたんです。いま思うとケンカもしつつ、瀬古さんの手のひらの上で転がされていたと思いますが、私も学生たちからそうした欲を引き出せるようになりたいですね」
そしてこう付け加えた。
「指導者の究極は『選手を止めること』ですから」
「ユニフォームへのスポンサードも検討しなくては…」
学生の意識に応えるべく、環境の整備も進めている。花田監督自身、大学4年生の時に欧州遠征を経験したことで飛躍するきっかけをつかんだ。
「同じような場を準備したいですが、いかんせん、予算がありません」
そこで浮上したのが、2月に発表される見込みのクラウドファンディングだ。
「海外遠征、合宿の充実を目的としています。当初の目標は500万円です。そこを突破したら1000万円、そしてさらに次の目標を設定しています。ただし、学生の強化は単年ではなく、長い時間かかるものですから、少なくとも5年は継続できるプロジェクトの形にしていきたいと考えています」
名門でありながら、早稲田の環境は必ずしも恵まれているわけではない。
現状では指導に当たる専任コーチは花田監督がひとりだけ。それに対して、今回の箱根駅伝で2位に入った中央大学は、藤原正和監督を筆頭に4人の指導陣を揃える。これは人件費の差を示す。