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まさかの出遅れ、シード権ギリギリ…箱根10位・東洋大はなぜ苦しんだ? 主将の反省と、監督の“安堵”の中身「最低でもシード校でいなければ」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/01/17 17:00
箱根駅伝10区を走り、総合10位でフィニッシュした東洋大学の清野太雅(4年)
「柏原さんが4分58秒差をひっくり返した時の動画は何回も見ましたし、そういう状況(序盤で出遅れる展開)になるかもしれないなっていう想定もしていたので、“自分がヒーローになってやるんだ”っていう気持ちで走りました。それに、柏原さんからの言葉を信じて、きつくても諦めずに上りました」
前田は気迫のこもった走りで3人を抜き(区間5位)、11位で芦ノ湖に辿りついた。シード権が与えられる10位までは1分27秒と、復路に望みをつないだ。
「主将としての責任を持って挑み、本当に良い走りをしてくれたと思います」
酒井監督も前田の走りをたたえていた。
東洋大主将の反省「シード権争いをするチームではない」
復路では、九嶋と熊崎を起用できなかった6区と7区で苦戦。それでも、8区の木本大地(4年)が区間賞の走りで流れを引き戻すと、9区の梅崎蓮(2年)も区間4位と好走し、なんとか10位に滑り込んだ。2区途中では最下位に転落する場面がありながらも、そこから見事に巻き返した。
これで18年連続シード権を獲得。これは現在継続中のチームでは最長となる。栄枯盛衰の激しい昨今の箱根駅伝において、これほど長期間に渡ってシード権を保持し続けるのは容易いことではない。
だが、前田はこう言う。
「シード権争いをするチームではないと思っているので、シード権を獲れたから良かったというのではなくて、反省をしなければならない」
堅実に“つなぐ駅伝”を志し、3位以内を目標に掲げていただけに、シード権を獲得しただけで満足するわけにはいかなかった。
酒井監督が明かした「安堵感」の中身
酒井監督もまた、悔しさや危機感を吐露していたが、その一方で、一抹の安堵感も口にした。
「やっぱり優勝や3位以内を狙うには、シード権という土台には乗っておかないといけない。意識の面もそうですし、出雲にも出られなくなるし、年間スケジュールやチーム運営が変わってきますので、最低限でもシード校でいなければ」
ひとまず第100回大会の出場権は手にした。立て直しはこれからだ。
今回の箱根駅伝は不運もあって10位に終わったが、もっとも今シーズンの東洋大の取り組みを見ると、もう一段高いステージに上がるために、試行錯誤しながら一皮むけようとしている最中のようにも思えた。
実際に、酒井監督は以前、こんなことを話していた。