Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“森保監督の参謀”はJ2降格+補強禁止ジュビロをどう再建? 横内昭展新監督がシビれた藤田俊哉SDの熱意「僕しかいない、と」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/01/10 17:16
新高3ながらトップ昇格の後藤啓介と写真に収まる横内昭展新監督、藤田俊哉SD。磐田再建へのスタートを切る
横内氏は東京五輪代表を率いた時期がある
横内監督にとって念願の監督就任となるが、監督経験がまったくないわけではない。東京五輪代表とA代表の活動が重なった18年9月から21年6月までは森保監督に代わって東京五輪代表チームを率いた経験がある。
19年10月には敵地でブラジル五輪代表を、21年3月には故郷の北九州でアルゼンチン五輪代表を撃破した経験もある。
指導者として最も影響を受けたのは、ペトロヴィッチ監督だという。「ミシャさんは凄い」と、その攻撃のアイデアや攻撃のコンビネーションを生み出すロジック、トレーニング方法に感銘を受けている。実際、広島でも日本代表でも攻撃面のトレーニングを担ってきた。
磐田を率いるにあたっても、こんなふうに語っている。
「FWだろうが、GKだろうが、攻撃であろうが、守備であろうが、チーム全員でボールに関わる、試合に関わるサッカーがしたい。そういうサッカーをやれれば、クリエイティブなコンビネーションやプレーが生み出されると思っています。もっと言えば、自分たちが主導権を握って、常にボールを握りたい。ジュビロのスタイルもそういうスタイルでしたよね。力関係でそういう試合にならないときがあるかもしれないけれど、たとえ短い時間でもボールを握ったときに自分たちが意図して攻撃できるようなサッカーをやっていきたいと思います」
“新規選手の登録禁止”をネガティブに捉えない理由
懸案事項は、補強ができなかったことだろうか。
21年に加入したファビアン・ゴンザレスの契約を巡り、国際サッカー連盟からは今季の新規選手の登録を禁止されている。昨季のメンバーと、ユースからの昇格選手、レンタルバックの選手でチームを編成しなければならないのだ。
もっとも、横内監督はネガティブに捉えてはいなかった。
「昨季の試合を何試合かチェックしましたけど、J1で戦力が劣っていたとは思わなかった。戦力だけを見ると、十分戦えると思います」と語り、「こういう機会だから、若手をしっかり鍛えて育てていきたい」とも語った。
しかし、だからといって1年でのJ1復帰が容易なミッションというわけではない。
いや、J1復帰だけに焦点を当てれば、現有戦力でも、やり方次第でミッション達成は可能だろう。指揮官も言うように、それだけの戦力は揃っている。
だが、磐田が今、目指すべきは、J1に定着して再び強豪クラブに返り咲くことだろう。藤田SDもクラブの描く青写真について、こう説明している。
「J1に上がってまたJ2みたいなことは二度と繰り返したくない。J1に上がって、どう戦うか。J1で勝ち切って世界に出ていく、というビジョンのもとでチーム作りをしていきたい」
つまり、横内監督に求められるのは、しっかりとした基盤を作ること――。
新監督が最初のミーティングで選手たちに強調したのも、そのことだった。