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異例のコーチ就任…中村俊輔(44歳)が引退後、すぐ指導者に転身する“覚悟”「自分のプレー感覚が残っているからこそ、グラウンドに立っていたい」
posted2023/01/10 06:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
JIJI PRESS
現役を引退してすぐさまトップチームのコーチに就任する事例などあまり聞いたことがない。日本サッカー界を代表する選手であればなおさらだ。解説者になっても引っ張りだこだろうし、育成年代から指導者生活を始めたっていい。JFAやクラブで役職に就きながら外からサッカーの世界を勉強することだってきっと可能であった。
中村俊輔は「現場」にこだわった。来季J1に昇格する横浜FCにそのまま残って、選手からコーチに立場を変える選択をしたのだ。先日、「文藝春秋100周年オンライン・フェス」に出演(筆者が相手役を務めさせていただいた)し、このように言及している。
「横浜FCには恩があるし、まだ出来上がっていないチームというか、そこに自分も身を置いて一緒に成長したい。自分のプレー感覚が残っているからこそ(現場の)グラウンドに立っていたい」
つい最近までともにプレーしていたのだから、選手の気持ちも十二分に理解できる。監督と選手の間に立って、双方向でフォローしていく役割を担うことになる。
指導者としての根幹は「人と人との信頼関係」
現在はB級コーチライセンスまで取得済み。Jリーグで指揮できるS級取得には最短でも3年掛かる見込みだ。将来的に「監督」を目指すかどうかまでは決めていない。育成にも関心があり、実際に指導者になってみてから方向性を定めていきたいという。ただ、指導者として絶対に大切にしたいと考えているのが「人と人との信頼関係」である。
中村は言う。
「これがないと、いくらボード上でやりたいサッカーだと言ってもうわべだけの勝利、うわべだけの戦術になってしまったことが自分の経験上もある。それだと見ている人も面白くないだろうし、感動も起きないし、選手だって躍動しないと思うんです。
情熱のある監督さんのもとでやったときに凄い勝ち方とか、たとえ負けてもやり尽くしたとか、サッカー選手冥利に尽きたなという瞬間が多々あった。やっぱり信頼関係とリスペクト、そこなのかなって」
うわべだけではない関係性をつくるためにも腰を落ち着けて、選手一人ひとりにじっくりと目を配っていくつもりでいる。ひと息つく間もなく、次のチャレンジに向かう。