Jをめぐる冒険BACK NUMBER
“森保監督の参謀”はJ2降格+補強禁止ジュビロをどう再建? 横内昭展新監督がシビれた藤田俊哉SDの熱意「僕しかいない、と」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2023/01/10 17:16
新高3ながらトップ昇格の後藤啓介と写真に収まる横内昭展新監督、藤田俊哉SD。磐田再建へのスタートを切る
「ベースの部分、幹をもっと太くしたいという話をしました。個人の成長なくして基盤作りやJ1復帰はない。その成長があって初めてしっかりしたものになるし、目標が見えてくる。時間はかかると思いますが、地道にやりながら、ジュビロのサッカーを作り上げていきたい。僕からしたらジュビロはすごいクラブなんですよ。2000年代の黄金期、僕は広島で仕事をしてましたけど、なんでこんなに強いんだと。過去のことを引きずりたくないんですけども、現状をしっかり把握しながら、少しでもそのときに近づければ、と思っています」
山田大記が感じる“横内ジュビロ”のイメージとは
指揮官の考えをすでに理解している選手がいる。2年前のJ1昇格を経験した山田大記である。今季の戦いのイメージをこう語る。
「2年前は勝ちながら強くなるということをすごく意識してチームを作りました。結果としてJ2では強いチームが作れたと思っていますが、脆さみたいなものを感じたのも事実。今年は実力があるから勝てるという試合をどれだけ増やしていけるか。勝ちながら強くなるのか、強くなったから勝てるのかは大きく違うし、後者のほうが難しいと思いますけど、後者を成し遂げなければならないのが今のクラブ状況だと思う。難しいチャレンジになりますけど、しっかりと基盤を作って、強いから勝てる、そういうチームになっていきたい」
それがいかに難しく、時間の掛かるチャレンジであるかは、指揮官や山田に限らず、J2に3度降格した磐田の関係者なら、十分理解しているはずだ。
J1王者の横浜F・マリノスも、いきなり強くなったわけではない。15~17年シーズンにエリク・モンバエルツ体制で基盤を作り、アンジェ・ポステコグルー体制の1年目は残留争いに巻き込まれたが、翌19年にリーグ優勝という形で結実した。
過去6シーズンで4度、リーグ王者に輝いた川崎フロンターレは、鬼木達体制1年目でリーグ初制覇を達成している。しかし、無冠だった風間八宏体制の5年間で基盤を築いた事実は見逃せない。
果たして藤田SDはどれだけ横内監督を信じられるか、そして横内監督に託した自身の目を信じられるかどうか。クラブ創立30周年の記念すべきシーズンだが、目先の結果にとらわれず、5年後、10年後を見据えたチーム作りに着手する必要がある。
若手をしっかり鍛え上げ、クラブの基盤を作るという意味では、補強禁止という試練もプラスに働くかもしれない。
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