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戦力外→引退後は「1年くらい家に閉じこもって…」元近鉄ドラ1が語る“接骨院の経営者”の今「引きこもることも人生には必要です」 

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岡野誠

岡野誠Makoto Okano

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photograph byMakoto Okano

posted2022/12/27 11:03

戦力外→引退後は「1年くらい家に閉じこもって…」元近鉄ドラ1が語る“接骨院の経営者”の今「引きこもることも人生には必要です」<Number Web> photograph by Makoto Okano

元近鉄の高柳出己さん。戦力外通告を受けた元プロ野球選手が第二の人生に向かう時、最も大切なことは何か?

経営者&野球指導の「今」

 プロ野球時代に稼いだ貯蓄も底をついた頃、知り合いの紹介で接骨院の経営者に出会った。雇われ仕事に向いていないと感じていた高柳は興味を抱いた。その直後、藤井寺球場近くの羽曳野市に空き物件を見つけ、1999年から整骨院とスポーツアカデミーを始めた。

「借金を3000万円して内装を変えたり、機械を入れたりして一から作りました。やりたいことが見つかったので、通信制の大学は中退しました。ただ、人を雇うだけでなく、自分も骨や筋肉の構造を知りたかったので、専門学校に3年通って柔道整復師の資格を取りました。今は施術してないですけどね。経営者は、社員に気持ち良く仕事をしてもらわないといけない。言葉の掛け方は仰木さんや権藤さんを真似しています」

 同じ場所で小学生や中学生に野球の指導もしている。巨人で1年目にファームの首位打者を取った山下航汰(現・三菱重工East)も『たかやなぎスポーツアカデミー』出身だ。

「子供は土日に自分のチームに行くので、平日の夕方に教えています。今、90人ぐらいですかね。(教え子が)ドラフトで指名されそうになったら、『一生分稼がないと大変だぞ』と伝えます。プロ野球選手になると、いわば自分の会社を立ち上げるわけですよね。でも、10年くらいすれば引退という名の倒産をする。20代後半や30代から全く別の人生を歩まなければいけない。それでも、プロを選択するのかと覚悟を問います」

「引きこもることも人生には必要」

 藤井寺と富田林で障害者の就労支援施設の経営もしており、土日には大阪公立大学と立命館大学の野球部で教えている。多忙で充実した日々を送れている秘訣は何か。

「プロ野球界にしがみ付かなかったからですかね。コーチになれても3年でクビになるかもしれない。そしたら、また困惑する。現役選手よりも年を取っているから、コーチの再就職のほうが大変みたいです。自分が何に合っているか、どうすれば稼げるか。焦らず、じっくり見極める時間が大切だと思うんです。引きこもることも人生には必要ですよ。次の仕事への“助走”の時間を作れるように、現役時代に貯金をしておくのも大事です。一度、稼ぐ手段がわかれば、怖くなくなる。NPBのコーチはその後でもできますからね」

 戦力外通告を受けたからといって、人生が終わるわけではない。考え方と行動次第で、必ず道は開ける――。

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「門限を破った加藤哲郎が2階から入って…」元近鉄ドラ1選手が明かす“自由すぎた選手寮” 加入直後のブライアントにスパイクを貸すも…

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