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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中村憲剛がカタール帰りの代表選手に聞いた「クロアチアが一番イヤだった」は何を意味しているのか?「あの“戦い方の幅”を参考に」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2022/12/24 11:02
決勝トーナメントで日本とブラジルを破り、3位決定戦でモロッコに勝利したクロアチア。中村憲剛氏は同国の“戦い方の幅”にヒントがあると語る
日本の指導者に課せられた大きな責任
田中碧が初めて観たW杯は、10年の南アフリカ大会だそうです。僕の時代とは違って、日本がW杯に出場するだけでなく勝つことを、彼は少年期から当たり前のように見てきたのです。
そして今回のW杯では、育成年代の選手たちが「ドイツとスペインに勝つ日本」の姿を目の当たりにしました。“ドーハの悲劇”に泣いた自分が過ごした日常と、W杯に当たり前に出場してドイツやスペインに勝つ日本を見た選手の目線と日常は、明らかに違います。
日本サッカーの未来を担う選手たちは、「次は自分がW杯に出て、ベスト8の壁を破るんだ」というマインドで日々過ごすでしょう。
その選手たちを、より高いレベルへ引き上げるのは僕たち指導者の役割です。その責任の大きさと難しさは、僕自身も感じています。
アルゼンチンは日本人と同じような身長の選手ばかりですが、日本の選手よりも胴回りや腕、太ももなどが逞しく、身体をぶつけてボールを狩り切るというサッカーの本質を、タフな状況下でも鮮やかなまでに体現しています。同時にボールをしっかりコントロールして運ぶ、もしくはテンポの良いパスワークを駆使して相手に奪われないといったことも、研ぎ澄まされた状態で実践できています。
アルゼンチンを率いたスカローニ監督は、僕の2学年上の年齢です。2年後に自分が世界一のチームの監督になっていることを、想像することができないのが悔しいです。しかしながら、彼の今大会の姿は僕にとってこれ以上ない刺激になりました。
世界における日本は、依然として追いかける立場です。これまでもそうでしたが、W杯が終わるたびに世界のトップから日本に足りないものを感じ、どうすればあの場所までいけるのかと、その差を日本サッカーは総括・考察してきました。その時点で、世界のトップは僕らが辿り着きたいと思っている場所から、すでに走り出しています。彼らの背中に近づいたと思ったら、離される。距離があることを思い知らされながらもここまで積み上げてきたなかで、今大会でドイツとスペインを破り、クロアチア戦はPK戦まで持ち込みました。