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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「日本の育成ではメッシやエムバペのような“特大の個”は育たないのか…?」中村憲剛がW杯決勝後に感じた“個と組織”のジレンマ
posted2022/12/24 11:01
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph by
Getty Images
日本中を熱狂の渦に巻き込んだカタールW杯は、アルゼンチンの優勝で幕を閉じた。
リオネル・メッシとその仲間たちが、36年ぶりの世界一に輝いた要因は何だったのか。
世界のトップクラスと日本の間には、どんな違いが横たわっていたのか。
4年後のW杯へ向けて、日本が進むべき道のりとは──。
2010年W杯メンバーの元日本代表MF中村憲剛氏に語ってもらう。(全2回の1回目/後編へ)
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18年のロシアW杯当時の僕は、まだ現役の選手でした。練習がある身なので、コンディションを考えて深夜や早朝の試合のライブ観戦は控えました。観ることのできる試合数にも限りがあり、大会全体を把握できるような視聴の形ではありませんでした。
引退して2年目で迎えた今回のカタールW杯は、現役当時のようにコンディションを気にしなくてもいいので、解説者として時間に制限をかけず、かなりの数の試合を観ることができました。そのおかげで身体はかなりキツかったのですが、世界における日本の現在地をいままで以上にリアルに感じることができました。
また、現在の僕は指導者として指導者ライセンス取得の講習に通い、育成年代の指導に携わっています。育成年代やJリーグ、さらには日本代表で、ここからどのように選手と関わっていくべきだろうと、解説者と指導者の目線で考える初めての機会にもなりました。
日本代表がベスト16までいってくれたからこそ、見えたことが本当にたくさんありました。森保一監督と選手のみなさんには、改めて感謝の意を伝えたいと思います。
「11月開幕」の影響を感じた部分とは?
多くの感動と興奮を生んだ今大会を振り返るにあたり、その要因のひとつとして開催時期が史上初の11月開幕だったことがあげられます。
ヨーロッパのシーズン終了後、約1カ月の準備期間を挟んで行なわれてきたこれまでの大会では、コンディションが上がりきっていない序盤はスロースタートで、試合を重ねるごとにコンディションを上げていったチームが勝ち上がる印象でした。強豪国はその流れを念頭にチームを作るところもあり、序盤からエンジン全開で臨まなければグループリーグ突破が叶わない国との初戦で、まさかの敗戦を喫する要因のひとつにもなっていたと思います。
それが今回は、ヨーロッパ各国リーグがシーズン真っただ中での大会となりました。開幕前までにかなりの過密日程で試合を消化するなかで、大会直前にケガをする選手が続出したことはとても残念でした。その一方でシーズン中の開催なので、選手のコンディションは悪くなく、むしろ良かったのではないかとも思いました。