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三笘&伊東を活かすなら南野拓実が必要なのでは?「絶対に見返してやる」2試合連続ベンチスタートの“10番”はスペイン戦で主役になるか
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/12/01 17:00
ドイツ戦では堂安律の同点ゴールに絡む活躍を見せた南野拓実。スペイン戦では南野の嗅覚が日本を救うかもしれない
たとえば、起用が多い左サイドでのプレーシーン。中央で鎌田がボールを受けた時は、少しサイドに膨らみ鎌田がドリブル突破を狙えるようにサポートしながら、パスを受けてフィニッシュまで持ち込めるポジションを瞬時に取る。右サイドの伊東がドリブルで縦に仕掛けた場合は、角度をつけてゴール前に飛び込んでいく。ゴール前ではニアで潰れ、ファーを空ける選択だって迷うことなくできる。
ドイツ戦での堂安のゴールを振り返れば、南野の質の高い動き出しが大きな要素になっていた。
左サイドで三笘がボールを持って中央へ斜めのドリブルを開始した時、南野はそのドリブルコース上にいた。三笘の道を空けるためにポジションを移す選択肢もあったが、南野は三笘が相手を引きつけてからのスルーパスを選択肢に入れていることを瞬時に悟って、その場にステイ。三笘が相手DF2人を引きつけた瞬間にペナルティーエリア左の裏のスペースに走り込んだ。
「薫が最高のパスを出してくれた」と振り返る南野は、ファーサイドに浅野が飛び込もうとしているのを間接視野で捉えており、「(浅野が)合わせてくれるか、もしくはオウンゴールも起こるかもしれない」と、ボールをキープすることなくダイレクトでグラウンダーの速いボールをゴール前に蹴り込む。そのクロスボールはドイツ代表GKノイアーに弾かれたが、ボールは堂安の前にこぼれる最高の形に繋がった。
ゴールの“予感”を瞬時に察知できる嗅覚と、それを体現できる能力こそ、南野の優れた長所なのだ。
三笘や伊東の武器を引き出す動き出し
W杯は27歳にして今回が初めて。だが、森保ジャパンにおいてその経験値はずば抜けている。20歳で欧州に渡り、チャンピオンズリーグなどを経験。プレミアリーグのリヴァプールではフィルミーノ、サディオ・マネ、モハメド・サラーという世界的なスーパースターとポジション争いを繰り広げ、タイトルも獲得した。苦しい時期も多かったが、南野は折れることなく与えられたチャンスで全力を尽くし続けた。その経験値は“絶対負けられない戦い”できっとチカラになるはずだ。
スペイン戦は、ボールを保持される時間は長くなるだろう。ともすれば、伊東や三笘のように“一発”を持った選手が重要になる。そしてさらに重要になるのはその“一発”を引き出せる選手がいるかどうかだ。南野はまさにそれに値する。
攻守のバランスを見ながら、時に献身的にプレーし、攻撃のスイッチが入ったら個が生きる場所を察知して先回りして、適した判断を下す。日本代表の10番がいよいよ主役になる時が来るかもしれない。