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「チームメイトが“恋バナ”しているヨコで黙って体幹トレ」アーセナル冨安健洋が中学~高校時代、アビスパに残した“超絶マジメ”伝説
posted2022/11/23 11:26
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Mark Metcalfe ー FIFA/Getty Images
アビスパ福岡の若き才能たちに、このタイミングで冨安健洋が伝えたかったものは伝わったのか。それは、アビスパの育成スタッフたちの感想から明らかになっている。彼らはみな、「今回の活動で改めてパーソナリティの大切さに気づいた」と口をそろえる。
では、そう気づかせた冨安のパーソナリティとは何だったのか。最終回では、アビスパのアカデミーに残る「冨安伝説」を振り返ることで、選手の成長に欠かせない「パーソナリティ」について明らかにしていく。
ゴメン! それだけはオレにはわからない…
「うーん、わからない。ゴメン! それだけはオレにはわからない……」
アビスパの未来を担う選手から寄せられた質問に対して、冨安が丁寧に答えてきたことは#1や#2で紹介してきたとおりだ。ただ、そんな冨安でも、明確な答えをつむぎだせない質問があった。それが以下のようなものだ。
「モチベーションを高く保ち続けるためには、どうしたらいいですか?」
常に、高くあるもの。
それが冨安の考え方だという。だから、若い選手たちの質問に、何と答えればよいかわからなかったのだ。「冨安はモチベーションが枯れた経験のない選手」とアビスパのアカデミーの指導者たちは考えている。
この話はまだ序の口だ。アビスパ福岡には、冨安に関する数々の伝説が残っているからだ。
ただ、マンガの主人公のように派手なエピソードはほとんどない。むしろ、小学校の図書館に並べられて伝記本で描かれる偉人たちのように、実直で、真面目な逸話が多い。
「冨安選手は自主的に取り組んでいたから…」
そもそも若い頃の冨安とは、どういう選手だったのだろうか。
指導者たちが口を揃える素質がある。それが、「自ら課題を見つける力」だ。
「おそらく、『冨安はオレが育てた』と言う指導者はいないと思うんですよね」
そう語るのは強化部兼アカデミーテクニカルアドバイザーの藤崎義孝である。「冨安を私が育てました」という気がおきないのは、冨安が“立派すぎた”からだ。
「彼に何かを聞かれて、こちらが答えるようなことはありました。だけど、彼に対して『こういう練習をしなさい』とか『自分の頭で考えてから行動しなさい』と声をかけるようなことは一切無かったです。はじめから、自分の頭できちんと考えてやれる子だった。ありがたいことに、彼について取材していただくことはあるんですけど『彼の指導に手を焼いたとエピソードなどはありますか?』というような質問を受けると、本当に困ってしまいます(笑)。彼は自分で目標を設定して、そこに向けて当たり前のように努力する選手だったので」