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「同年代の選手とプレーすることは恥ずかしいこと」“アーセナル冨安健洋先生”の白熱教室…アビスパ後輩の疑問に答え続けた3日間
posted2022/11/23 11:24
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by
Kiichi Matsumoto
冨安健洋が、今年6月に日本サッカー史に新たなページを刻む取り組みを見せたのをご存じだろうか。
プレミアリーグではウインターブレイクがないために、オフ期間は夏休みの一度だけ。貴重な日本滞在期間中に、実は冨安が情熱をこめて取り組んでいたプロジェクトがあった。
所属するアーセナルが首位で中断期間を迎え、晴れてW杯メンバーとして大舞台に臨むいま、その全貌に目を向けることに意義があるはずだ。
みんなには冨安健洋を超える選手になってほしい
「みんなには、冨安健洋を目指すのではなく、冨安健洋を超える選手になってほしい。世界を目指すにはここにいてはいけない。1日でも早くプロになって、厳しい環境に身をおくこと!」
そう呼びかけたのは、他でもない、冨安だった。
今、やらないといけない。恩返しがしたい。
2つの強い想いが彼を突き動かしていた。半年以上の準備期間をかけ、故郷である福岡の地で「冨安キャンプ」を実現させた。
2018年にベルギーのシント・トロイデンへ移籍するまで、中学生のころからアビスパ福岡で冨安は育った。そんな古巣のアカデミーU-15、U-18に所属する選手たちの一部、具体的には15歳と16歳の選手を中心に3日連続で特別指導を行なったのだ。
冨安はサッカーに関することであれば積極的に口をひらく一方で、目立ったところに出る必要がない状況であれば、静かに暮らしたいと考えるタイプだ。そんな冨安が熱を帯びた声で冒頭の言葉を伝えていたとき、選手たちは息を飲み、食い入るように耳を傾けていた。
そして、そのかたわらにいたアビスパの育成にかかわるスタッフたちは、心のなかで強くうなずいていた。
あの言葉の真意を知っているからだ。
世界は17、18歳でプロに交じっている選手が
「世界を見れば17歳や18歳で(大半が20歳以上の)プロに混じってプレーしている選手がゴロゴロいます。だから、今の若い子たちには、『同年代の選手と一緒にプレーしていることを恥ずかしい。もっと成長して上のカテゴリーでプレーしたい』と思ってもらいたいんです」
冨安はことあるごとに、このようなニュアンスの言葉を口にしてきた。例えば、ヨーロッパのシーズンオフにアビスパの施設を訪れたときのこと。ユースの選手たちだけでなく、指導者たちに伝えることもあったほどだ。
ここでは、そんな冨安による一大プロジェクトの概要について振り返っていく。