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《東大出身のプロ野球選手》宮台康平の引退で球界から消滅…唯一「勝利投手」と「ホームラン」を記録したのは?「5万観衆」の大穴弾秘話
text by
渋谷真Makoto Shibutani
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/10/31 11:01
7人目となる「東大出身のプロ野球選手」の誕生が待ち望まれている
投手としては通算17試合で1勝4敗、防御率5.13。打者としては12安打、打率.188。新治の9勝には及ばないが、現時点で「東大出身最後の勝利投手」であると同時に「唯一の本塁打を放った打者」でもある。現在、東大監督として野球部を率いる井手は、プロで残した実績と指導についてこう話す。
「私がバッティングの話はわからないって言ったら『監督、ホームラン打ってるじゃないですか』って言われるんです。バッティングとピッチングは本当にわからない。難しい。守備と走塁は理論が固まってきているじゃないですか。でもバッティング、ピッチングはそうじゃないから」
理屈抜きに練習をこなし、試合でできなかったらまた練習…。これが昭和のスタイルだとしたら、指導者とも議論し、理論を理解してから実践するのが令和の大学生だ。井手が誇らしげに語らなくても、学生は井手の経歴を知っている。しかし、プロを経験したがゆえに指導が難しいということもある。野球は確率のスポーツだ。例えば本塁打を打つ確率を増やすアプローチはいくつかあるが、そこに普遍性はない上に、本塁打だけが野球の目的ではないからだ。
「東大野球部」ゆえのバランスの難しさ
「楽しいっていうより、苦しいよ。やはり勝ちにいかなきゃいかんのは難しい」
個人の目標は技量を上げること。チームは1勝、勝ち点、最下位脱出。そのバランスが難しい。「7人目」を本気で目指す、意識の高い選手が多いからなおさらである。
「今はプロ志望届を出すからね。私なんか今の選手だったとしても、とても出す自信はありませんが」
この秋は投手の井澤駿介と俊足外野手の阿久津怜生が志望届を提出し、ドラフト指名を待った。しかし最後まで名前が呼ばれることはなかった。入試、ドラフトを突破した先にある勝利投手と本塁打。宮台の引退によって挑戦資格者も一時的に消えるが、どちらが出ても井手以来。その教え子が新たな歴史を刻むかもしれない。
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