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「タナより泣いちゃったと思います」とファンも万感…鈴木みのるが歓喜し、棚橋弘至が涙した“新日本プロレスに声援が戻った日”
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/09/11 17:00
約2年半ぶりとなるファンの歓声に手を振って応える棚橋弘至。試合後には「うれしすぎて、何も浮かんでこない」と感激の涙を流した
未来を担うヤングライオンたちも感慨
9月6日にはこんなこともあった。コロナ後にデビューした大岩陵平、藤田晃生、中島佑斗のヤングライオンと呼ばれる3人は声援を受けたことがない。リングに上がり、殴り殴られ、投げたり締められたり、ただただそうやって試合を消化していた。ついに3人は未経験の「声援」を体感した。
「今日の大歓声聞いて、やっぱ自分はこの道選んで良かったなって、そう思いました」(大岩)
「プロレスに出会って13年。自分はその新日本プロレスのリングで歓声を聞いて、戦うことに憧れを持っていました。その夢の一つが今日叶いました。でも、喜べるのは今だけです。これからもシリーズはまだまだ続きます。必ず1勝もぎ取って、自分がヤングライオンの中でも1番になります。今日は一生忘れないです」(藤田)
「初めて新日本プロレスのリングで、歓声、声援を貰ってよ、今まで中学の時から目標にしていたリングを、新日本プロレスを選んで、改めて間違えてなかったと思う。もっと強くなってやる」(中島)
新日本プロレスの大張高己社長はバルコニーからずっと客席に視線を送っていた。会場の雰囲気が気になったのだろう。筆者には、大張社長が大きな声援にうなずいていたように見えた。
ガイドラインの改定も後押しに?
プロレスに限らずコロナ禍での興行には政府のガイドラインという厄介なものが存在している。サッカーやプロ野球も同様だが、Jリーグは9月5日、「声出し応援エリア」を設置した6月11日から8月14日に行われた28試合についての簡易レポートを公表した。
Jリーグは検証の結果、「感染対策を適切に行うことで、声出し応援エリアと声出し応援をしないエリアの併存運営が可能である」との見解とともに、新型コロナウイルス対策の専門家チームへ最終報告を行い同様の見解が得られたという。8月15日以降は希望する全てのクラブがガイドラインに沿った専用の応援席(エリア)を設けることで、Jリーグの一部の試合から段階的に声出し応援を再開している。
Jリーグではないが、AFCが主催するアジア・チャンピオンズリーグ集中開催(8月18日から25日、埼玉スタジアムおよび浦和駒場スタジアム)では準決勝の浦和vs全北現代に2万3277人が入り、ゴール裏では従来に近い応援が行われた。浦和の選手たちはそれに痺れ、感動していた。浦和は期間中3試合を戦ったが、3試合とも「ああ、サッカー場にいる」という感覚になれた。