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「タナより泣いちゃったと思います」とファンも万感…鈴木みのるが歓喜し、棚橋弘至が涙した“新日本プロレスに声援が戻った日”
posted2022/09/11 17:00
text by
原悦生Essei Hara
photograph by
Essei Hara
この日、後楽園ホールには大きな歓声が響き渡っていた。収容人数を座席数の半分以下の700人にして、北側後方数列を除く、東、南、西の3方向はすべて声出し応援可能エリアとした。もちろん不織布マスクの着用は義務づけられており、オーバーマスクをしていた人は下にちゃんと不織布マスクがあるかどうかのチェックまで行われたという。客席のマスク着用率は100%だった。
9月5日、新日本プロレスの後楽園大会は「プロレスに来ている」と感じることができた。もしかしたら、コロナ禍以前の声援より大きかったかもしれない。声を出したいという欲求が2年半の歳月を経て、やっと実現したからだった。ひいきの選手でなくても、思わず叫んでしまったというファンも多かった。
「疲れました。プロレス観戦がこんなに疲れるものだと思っていなかった。オープニングから泣きました。幸せで、うれしくて。タナ(棚橋弘至)より泣いちゃったと思います。たぶん、涙の量はタナに勝ちます。家に帰ってからワールドでバックステージの選手のコメントを見てまた泣きました」
鈴木みのる「これがプロレスのあるべき姿だ」
試合前は、「恥ずかしいから声出せるかな? どんな声援を送っていたっけ?」と尻込みするファンも少なくなかったようだ。そんなファンの心を見透かしたように、高橋ヒロムが試合前にリングに上がって声出しのウォームアップを行った。
第1試合の鈴木みのるの入場時には「風になれ」の大合唱が聞こえた。これには鈴木も、うれしそうな笑みを隠せなかった。
「これがプロレスのあるべき姿だ。腹の底から応援して、腹の底から『ふざけんなこの野郎』って文句言って。1日楽しんで、明日の活力にする。それが日本におけるプロレス。オレはずっとそう思っている。オレが思う最高のプロレスは、大衆娯楽だ。日本にプロレスが根付いて何十年、新日本が50年だからもっとだ。70年とか。それにしても何かある度にオレ、第1試合の男になってるな。ふざけんなよ。でもね、プロレスファンってすごいよ。
やっぱりオレがプロレスに求めていたのはこの声援だ、声だ。たとえ、応援とかそういう目的じゃなかったとしても、とりあえずこの声が出ているプロレス、それを求めていた。みんな、コロナ前より声出てるんじゃないの? すごくうれしい。ずっとこの声をオレたち、レスラーに聞かせてくれ。拍手もうれしいよ、うれしいけどさ、プロレスの醍醐味を9割、9割5分、いや9割9分失った状態で、試合していたと改めて思った。そう、これがプロレスだ」