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羽生結弦を追い続けたカメラマン2人は被写体・羽生をどう見ていた?「羽生さんは場の空気を変えるのがすごい」「結弦くんは“対アスリート”より近い感覚でした」
posted2022/08/30 18:10
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph by
Sunao Noto(a presto)
その羽生と同じ仙台出身で、10年以上にわたり撮影を続けてきた写真家・能登直と『Number』で羽生の表紙写真を何度も撮り続けてきた文藝春秋写真部の榎本麻美が「印象に残る写真ベスト5」、「被写体としての羽生結弦」というテーマで語り合った。<全3回の3回目/前回は#2、初回は#1へ>
撮った後に「こんなにお客さんがいたんだ!」と驚いた
榎本 能登さんの4枚目を見ていきましょうか。
榎本 仙台、ですか? すごいですね、この1枚。
能登 ソチ五輪のときはパレードカーに同乗したいなと思いながら叶わず、平昌五輪では念願叶って、パレードの車に乗ることが出来ました。撮影中は結弦くんしか見ていなくて、観衆がたくさんいるんだろうなとは思っていたのですが、あとで写真として見た時に、「こんなにお客さんがいたんだ!」と驚いた1枚でした。
榎本 すごいお客さんの数ですね。
能登 10万人以上いましたね。
榎本 メダルを見ているこの瞬間というのもいいですね。
能登 車の上でいろいろな動きをしていたんですけど、感慨深げな結弦くんと沿道にこんなに人がいるよっていうのを1枚で表現できているので、これがいいかなと思って、選んだ1枚ですね。
榎本 空の抜けもあって、構図もいいですよね。
大通りで狙って撮りました
能登 パレードカーの上は制限があって、観衆から見えなくなってしまうので、立ち上がっての撮影は基本NG。立膝くらいの体勢であれば数秒許される感じでした。何mmのレンズを使えば、数m先にいる結弦くんと沿道の観衆が入るか、というのがつかめなかったので、何本もレンズを持ち込みました。車が街中を進んでいく中、付け替えながら、この長さでこのレンズで撮るとこういうのが撮れるなとつかんでいって、決め打ちしていったという撮影の流れですね。
榎本 パレードの時間は限られていますよね?
能登 40分くらいで、最初の3~4分はいろいろ試しました。結弦くんによりすぎてしまうと、お客さんが入らず、写真として何をしているかイマイチわからない。一方で見上げるような、あおる感じで撮るとパース(遠近感)がかかって、近くの建物が目立つ形になってしまう。なので、ちょっとだけ目線を上げて、パースがきつくならないようにしつつ、若干見下ろすくらいじゃないとお客さんが入ってこない。この写真の大通りが一番お客さんが写るエリアで、それで狙って撮りました。
榎本 この構図も乗る前から思い描いていたんですか?