フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
羽生結弦を追い続けたカメラマン2人は被写体・羽生をどう見ていた?「羽生さんは場の空気を変えるのがすごい」「結弦くんは“対アスリート”より近い感覚でした」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph bySunao Noto(a presto)
posted2022/08/30 18:10
平昌五輪で2大会連続の金メダルに輝き、仙台で凱旋パレードを行った羽生。集まった観衆と羽生が映ったこの写真が撮れるまでには…
能登 見開きで使えるように結弦くんを右側に寄せて、左側に沿道のお客さんのすごさが出せるものは1枚ほしいな、と。そこに、このメダルを見せるように手にする、という動作がちょうどよくマッチした感じですね。
ファインダー越しに追いかけ続けたら、結弦くんは…
榎本 続いても能登さんのお写真、最後の1枚をどうぞ。
榎本 これは国民栄誉賞の時ですね。和装、似合いますね。
能登 官邸に向かう前の数分で撮ったんですが、歯を見せた笑顔ではなく、かといって険しい表情というのも晴れの舞台に似合わないので、口を開かないで、軽く微笑むくらいの表情がいいかなというやりとりをして撮影をしました。ファインダー越しに追いかけ続けたら、結弦くんはこのような舞台にまで……と感慨深かったですね。最後に榎本さんの5枚目行きますか。
榎本 北京五輪のフリーの演技の終わりの顔ですね。北京五輪の時はある程度ポジションが選べる状況だったので、演技が終わった瞬間の表情が撮れるところを……と逆算して、ポジションを選びました。そしたら、能登さんもそこで……。
能登 そうなんです。朝4時にみんな横並びでそこにいて場所を確保したんです。ジャッジのすぐ上のスタンド一列目で立って撮れるポジションが早い者順で確保出来たんです、北京は。そこだとフリーはたぶん一番いいのが撮れる場所だった。
榎本 努力でなんとかなるなら頑張って早く起きようと思って。3時30分にタクシーに乗って……。私はショートの演技の後、「フリーが終わった後、どんな表情を見せるんだろう」とどうしても気になっていたんです。だから、そこを狙いたいと思い、実際撮れたのも横顔で良い角度だったなと。場面としては手を降ろしてきて、一瞬微笑むような顔になっていて、それを編集の人が見てくれたので。弊社の話で恐縮ですが、『Number』はシビアで、五輪やそれ以外の大きな大会で、自社のカメラマンが撮った写真であっても他のカメラマンの写真のほうが良いと判断すれば、私たちの写真がページに載らないこともあります。載らないと悔しいと思うのと同時に、その写真を見ながら「あの人はこの写真をどう撮ったんだろう」「今度私はこう撮ろう」と考えたりして、モチベーションにもなっていました。そして北京五輪の後にこういった形で表紙になって感慨深かったです。
僕は欲に負けた。五輪ではいつか…
能登 僕は自分の「欲」に負けたんですよね。
榎本 欲に負けた?