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〈J2降格危機〉「ガンバらしさ=遠藤保仁らしさ」はアップデートされたのか 有能な片野坂監督“解任劇の本質”、変えるべきもの
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/08/26 06:00
片野坂監督の解任から、ガンバ大阪が教訓とすべきことは?
2018年以降の5シーズンで実に3度の監督解任を経験し、その度に残留争いに巻き込まれているガンバ大阪。新型コロナウイルスによるクラスターが発生し、クラブ史上例を見ない超過密日程を余儀なくされた昨年の低迷こそ不可抗力の側面が強いが、近年残留争いの常連になりつつある現状は、単に指揮官だけの問題ではないはずだ。
取締役に問うてみた“クラブ側の責任”
これだけ低迷が続くのはクラブに根源的な問題があるのでは――。会見で和田取締役にこんな質問を投げてみた。
「2年連続でこうやって監督を交代してしまっている部分ではクラブとしては当然反省しないといけない」という言葉の後、和田取締役は話を続けた。
「しっかりと人選した中でお願いをして来て頂いている監督なので、目指すサッカーというのを、我々フロント側とまず契約する前にもっと話をして行く必要がある」
つまり、片野坂前監督にはフロントが考える「ガンバらしさ」が十分に伝わっていなかったということなのである。
片野坂前監督が手腕の一端を見せる試合はあった
片野坂前監督がその手腕の一端を見せた試合があったのは事実である。
3月6日のホーム、川崎フロンターレ戦では宇佐美貴史がアキレス腱断裂で負傷交代するアクシデントに見舞われながらも連覇中の王者に真っ向勝負を挑み、終了直前まで2対1でリード。GK石川慧のミスでドローに持ち込まれたものの、鬼木達監督が「敗戦のゲームだと思っています。勝点1を拾わせてもらったということだけ」と振り返ったのも納得の内容だった。
そして6月29日のホーム、サンフレッチェ広島戦でも片野坂色が強く表れた変則的な3バックとハイプレスが機能し、2対0で快勝。今季のガンバ大阪は違う、と感じさせた。
ただ、片野坂前監督は有能ではあるが、全盛期を知るサポーターが考える「ガンバらしさ」とは異なるスタイルを持つ指揮官だったと思うのだ。
その象徴が、6月1日に行われた天皇杯2回戦のFC岐阜戦である。
この試合、ガンバ大阪はターンオーバーで主力を温存して来たFC岐阜に前半14分までに2点を献上。延長戦の末に4対2で振り切ったが、試合後に片野坂前監督は「横山(雄次)監督になられてリーグ戦で3バックで戦われることが多かったというところで、今日、我々は3-4-3で入るようにした。
マッチアップさせて、ミラーゲームになるという狙い。ただ、蓋を開けてみると岐阜も4-4-2の戦いをされてきた」とシステム面での誤算を口にした。だが、格下のJ3勢に対して、相手に合わせ、しかも後手に回るのは「ガンバらしさ」のかけらもない戦い方である。