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なぜ、フロンターレはコロナ禍でも大イベントを仕掛けるのか? ”J最強の企画屋”が明かす超攻撃的な戦略「重いバーベルを上げ続けないと…」
posted2022/08/19 06:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
J.LEAGUE
客足がなかなか戻らない――。
スポーツの取材をしていると、関係者たちからそんな溜息がよく聞こえてくる。コロナ禍はスポーツ界を長らく直撃し、現在もオミクロン株の猛威にさらされるなか、入場規制が緩和されてからもスタジアム、アリーナ、ホールなどスポーツ会場がビフォーコロナのときのように、満杯にはなっていかないという現実に直面している。
コロナ罹患を懸念して行けない人もいれば、声出し応援が解禁されてからと思っている人もいるだろう。オンラインで盛り上がる新たな観戦方法を楽しむ人だっているはずだ。その背景には様々な事情がある。
とはいえ、ファンの数自体が減っているわけではないから、などと指をくわえてただただ“帰還”を待っているわけにもいかない。スポーツ会場にファンを戻すためのアクションを起こしていく必要がある。
そんななか試合日のエンタメに力を入れてきた川崎フロンターレが、クラブ創設26(フロ)周年とあってこの夏、ホーム試合のイベントで果敢に攻めている。
6月18日の北海道コンサドーレ札幌戦では北海道テレビ放送の人気番組だった「水曜どうでしょう」とのタイアップ企画が評判を呼んでチケット完売。8月7日の横浜F・マリノス戦では「かわさき水まつり」を開催し、3つのテーマランドを用意するなどしてこちらも完売した。続いて6日後、13日の京都サンガ戦では「ボーイズビーアンビシャス」と題して格闘技を主なテーマに、プロレスラーの大仁田厚が試合前に電流爆破マッチを開催し、那須川天心が始球式を実施する予定だったが、こちらは台風8号の影響によってイベント自体中止となった(試合も延期に)。
なぜ、コロナ禍で大イベントを仕掛けるのか?
なぜフロンターレはアフターコロナに至っていない状況ながら、このように大きなイベントをバンバン仕掛けていくのか。“J最強の企画屋”と呼ばれるタウンコミュニケーション事業部の天野春果部長にインタビューした。
――F・マリノス戦はシーズンを占う大一番でもありましたが、「かわさき水まつり」の反響もあってチケットは完売しました。「かわさき水まつりランド」「FINLANDランド」「ふろん太海ランド」と3つのテーマランドを用意する大規模なイベントになりましたね。
「これまで川崎市民とサポーターの日常にフロンターレが非日常空間を生み出すべく活動してきましたけど、コロナ禍によってみなさんの日常からフロンターレが失われてしまっているところもあると感じています。ホームゲームイベントは年に約20回程度しかない市民、サポーターとの大切な接点なので、コロナ対策は取りながらもそれを理由にボリューム感を小さくしたくないというのが自分たちの考え方。むしろコロナ禍でもこうやって工夫すればコロナ以前よりパワーアップできるんだぞと示すため質量ともに増した『かわさき水まつり』の開催を意識しました」
――フィンランド大使館商務部協力の「FINLANDランド」には、サウナファンの関心を引くテントサウナ体験ブースなどもありました。