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レアル番記者の“久保建英ガチな評価”「クボが“試験”に合格したのは1年目だけ」「成長を妨げている最大の敵は彼自身。それに気づけば…」
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ハビエル・シジェス/ディアリオ・アスJavier Silles/Diario AS
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/08/21 17:02
ソシエダでいきなり結果を残した久保建英。昨季までのプレーはレアル・マドリーの番記者視点ではどう映ったか
ピッチから離れていた2カ月間はもちろん、復帰後も状況は好転しなかった。その後のクボは再び試合に関与する頻度が少なく、チームへの貢献度も低いテレビのハイライト映像でのみ目立つ選手に逆戻りしていった。
それでもルイス・ガルシアがクボに寄せる信頼は揺るがず、年明け以降も継続してプレー時間は与えられていた。指揮官はパフォーマンスの不安定さには目をつぶり、他と一線を画すクボのタレントを優先した。攻撃面で多くの武器を持たないマジョルカには、たとえ単発であっても試合の均衡を破り得るクボの力が必要だと考えていたからだ。
アギーレが久保を重要視しなかったワケ
だがそんな指揮官の信頼とは裏腹に、クボは尻すぼみに輝きを失っていった。唯一の例外は直接フリーキックによるゴールを決め、保有元のレアル・マドリーから祝福の連絡が届いたコパ・デル・レイのエスパニョール戦での活躍だったが、それも散発的なものに過ぎなかった。
さらにはクボが不安定なパフォーマンスに終始するのと並行し、マジョルカも調子を落としていた。結果が出ない中でチームには迷いが生じ、守備は脆く、攻撃は単調になっていく。そんな状況下でピッチに立ち続けたクボも、やはり負のスパイラルに巻き込まれることになった。
結局クラブは直近12試合で10敗を喫した時点でルイス・ガルシアに見切りをつけた。そしてこの決断がクボのターニングポイントとなる。ハビエル・アギーレの新監督就任と共に、彼の居場所はベンチへと移ったからだ。
メキシコ人監督がクボを重視しなかったのは、彼が守備の再建を最重要事項としたからだ。苦手な守備面でどれだけ力を注ごうと、クボに他の選手たちほどの貢献はできなかった。
アギーレは5バックにシステムを変え、ベテラン選手の経験とダイレクトプレーを重視した。その傍らでアジアの至宝2人(クボとイ・ガンイン)をベンチへ追いやったのは、新監督にとっては彼らが散発的に見せるタレントだけでは不十分だったからだろう。
たとえクボほどの輝きを放てなくとも、アギーレはコンスタントにチームに貢献できる選手を重用した。残念ながら、昨季のクボはその点で指揮官が求めるプレーレベルにはなかった。
1ゴール1アシストはあまりにも乏しい数字
見栄えが良く、周囲の目を引く選手ではあっても、実質的なチームへの貢献度は高くない。クボが直面している最大の問題は、まさしくそこにある。
この評価を覆せるのはクボ本人だけだ。美しい選手であれば良いと言う人もいるだろうが、美しさと生産性を兼ね備えた選手の方が良いことは言うまでもない。
マジョルカが劇的な形で残留を果たした昨季のラスト3試合で、クボはわずか42分間しかピッチに立っていない。残留を決めた最終節のオサスナ戦では全くプレーできなかった。このような形での幕切れは、序盤戦でしか輝きを発せずに終わった昨季を象徴していた。