欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
レアル番記者の“久保建英ガチな評価”「クボが“試験”に合格したのは1年目だけ」「成長を妨げている最大の敵は彼自身。それに気づけば…」
text by
ハビエル・シジェス/ディアリオ・アスJavier Silles/Diario AS
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/08/21 17:02
ソシエダでいきなり結果を残した久保建英。昨季までのプレーはレアル・マドリーの番記者視点ではどう映ったか
ジョルディ・ムブラに右サイドを任せ、より中央に配置された際にはライン間のスペースに顔を出し、アタッキングサードでチャンスメーカーの役割を担った。いずれにせよ、シーズン序盤のクボは矢のように鋭く前線をかき回し、チームメートも彼の判断力と1対1の突破力に信頼を寄せていた。
当時は最も難しいプレーであるフィニッシュの局面においても成長が見られた。ラストパスの精度は向上し、エリア内に侵入する頻度も増えた。常に相手が嫌がるサイドから攻撃を仕掛け、味方との連係プレーで違いを作り出し、シュートの本数と効率性も増した。
それまでの久保に欠けていたものとは
だが序盤戦のクボが期待を抱かせた最大の理由は、彼がコンスタントに輝きを放っていたことだ。それまでの彼に欠けているものを1つ挙げるとすれば、それは試合中に消えてしまう時間が長いことだった。
クボの能力に疑いの余地はない。だがクボはよりコンスタントに輝きを放ち、チームの利益を生み出し続けることが求められている。
スペインに来てからの3シーズンにおいて、クボがコンスタントに活躍し続けたのはルイス・ガルシアの庇護を受けた昨季の序盤戦(ベティス、アラベス、エスパニョール、アスレティック・ビルバオ、ビジャレアルとの5試合)しかない。
この5試合のクボはキレ味鋭く、頻繁にプレーに絡み、突破力と創造性を兼ね備え、かわすドリブル、様々な質のパス、素早い判断力といった持ち前の能力を存分に発揮していた。
とりわけコンプリートで穴のないクボが見られたのは、一昨季のレンタル移籍が失敗に終わったビジャレアル戦だ。
ボールとゲームを支配するウナイ・エメリのチームに対し、右サイドに配置されたクボは守備面でのハードワークを全う。対面するエストゥピニャンの攻め上がりにしっかり対応しつつ、インサイドハーフのマヌエル・トリゲロスへの警戒も怠らず、6度のボール奪取を実現した。
もちろん攻撃面では持ち前のタレントを総動員し、鋭いドリブルと正確なボールタッチ、緩急の変化を駆使して守から攻へのトランジションの中心となった。
1つのパスミスも犯さず、3つのゴールチャンスをつくり出したビジャレアル戦のパフォーマンスは自身の現在と未来を切り開くメッセージに思われた。ところが、クボはその矢先に不運な怪我に見舞われてしまう。
膝の負傷によって悪い方向へと変わった
昨年9月末のレアル・マドリー戦で生じた膝の負傷により、クボは突然に立ち止まることを強いられた。そしてこの負傷離脱を境に、クボの中で何かが変わってしまう。それも悪い方向へと。