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レアル番記者の“久保建英ガチな評価”「クボが“試験”に合格したのは1年目だけ」「成長を妨げている最大の敵は彼自身。それに気づけば…」
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ハビエル・シジェス/ディアリオ・アスJavier Silles/Diario AS
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/08/21 17:02
ソシエダでいきなり結果を残した久保建英。昨季までのプレーはレアル・マドリーの番記者視点ではどう映ったか
スペインで過ごした3シーズンのうち、クボが「試験」をクリアできたと言えるシーズンは1年目しかない。彼はもっと多くを要求されるべき選手だ。目に見える結果を見ても、昨季のラ・リーガでは1ゴール1アシストしか残すことができていない(コパ・デル・レイでは1ゴール2アシストを記録)。
これは日本代表の中心選手となり、ヨーロッパのトップエリートへの仲間入りを目指す選手としては、あまりにも乏しい数字である。
「タレントはあるが競争力に欠ける選手」というイメージ
日本代表でもマジョルカと同様の危機に陥っている。モリヤス(森保一)監督のプランにおけるクボの重要性は薄まりつつあり、イトウ(伊東純也)やミナミノ(南野拓実)に先発への扉を閉ざされただけでなく、ドウアン(堂安律)やミトマ(三笘薫)にもクボの立場は脅かされている。フランクフルトで活躍中のカマダ(鎌田大地)もそうだ。
クボは日本代表におけるチーム内競争でも遅れをとっている。先発争いのライバルたちがヨーロッパでの実戦経験を積み重ねる傍らで、クボにはステレオタイプの日本人選手というイメージが定着しつつある。
ヨーロッパにおける日本人選手は、昔から「タレントはあるが競争力に欠ける選手」というイメージが持たれてきた。今のクボもそうだ。カタールでのワールドカップ出場が危ぶまれることはないだろうが、新シーズンのチーム選びで間違った決断を下すわけにはいかない。
モリヤス監督からチャンスを与えられた際には、キリンカップのガーナ戦で見せたパフォーマンスを繰り返す必要がある。あの試合で決めたゴールは解放への第一歩だ。あの日のクボは適したポジショニングを取り、正確なプレーで攻撃に絡んでいた。
ガーナ戦で起用されたインサイドハーフへの適応は難しそうだが、今はどのポジションであれ出番を勝ち取っていかなければならない。もちろん、健闘虚しく完敗したチュニジア戦のように、右サイドとトップ下の間を動き回る方が適しているのは間違いない。
大きすぎる期待感は随分としぼんでしまった
クボは今、複雑な状況に置かれている。
加入当初、レアル・マドリーでは溢れんばかりのタレントに加え、アジア市場への窓口としても期待されてきた。だが現時点ではEU外国籍枠すら空いていない。レンタル先のマジョルカでも振るわなかった。
レアル・マドリーは、買い戻しオプションをつけた上での売却を視野に入れた(注:その後レアル・ソシエダへと移籍が決定)。それで元が取れるとは考えていないが、かつてクボに寄せられた大きすぎる期待感は随分としぼんでしまったからだ。
ファンやクラブ関係者を唸らせた2019年夏のプレシーズンマッチでの活躍も、もはや過去の話だ。