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「帝京魂は石橋貴明さんのイメージが…」“強かった帝京”を知らない高校生が、あのユニフォームに“10個目の星”を刻みたい理由
posted2022/08/17 06:00
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
ユニフォームに“10個目の星”は刻まれなかった。
2022年夏のインターハイ決勝。前橋育英と対戦した帝京は後半アディショナルタイムに失点し、0-1の惜敗を喫した。あと一歩のところで優勝を逃したものの、カナリア軍団が20年ぶりに全国制覇に迫った歴史的なゲームだった。
昨年、11年ぶりの全国大会となるインターハイ出場を果たしていた帝京は、2年連続での出場権を手にすると、大分鶴崎との初戦を7-2の大勝で好発進を切った。
そして2回戦では、昨年度王者であり、全国3冠を成し遂げた高校サッカー界の横綱・青森山田に2-1の逆転勝利。青森山田が早々に姿を消した衝撃と共に、帝京に対する「名門復活」「古豪復活」というキーワードが話題を集めた。
勢いに乗る帝京は続く3回戦でも福井の雄・丸岡を相手に2試合連続の逆転勝利。準々決勝では岡山学芸館を4-2、準決勝ではFC東京内定MF荒井悠汰を擁する優勝候補の一角・昌平に1-0で競り勝ち、ついに決勝まで上り詰めた。
元エース松波正信「寂しい気持ちはあった」
振り返れば、帝京が最後にインターハイを制したのは2002年度、冬の選手権に至っては31年前の1991年度まで遡らないといけない。優勝はおろか選手権出場は2009年度以来、遠ざかっている。結果だけを見れば、今回の躍進を「復活」と言われるのも無理はない。
91年度選手権で四日市中央工業(三重)との両校優勝を果たしたチームで2年生エースとして活躍した松波正信(現・ガンバ大阪アカデミーダイレクター)氏は、母校に対する素直な思いをこう口にする。
「昔は強かったと言われ続けていて、全国大会でその姿を見ることはできなかった。そこは寂しい気持ちはありました」
インターハイ優勝3回、選手権優勝6回……あの強かったカナリア色のユニフォームは、忽然と全国の舞台から姿を消していた。だからこそ、20年の時を経ての大躍進に、高校サッカーのオールドファンは大きく歓喜した。
だが、この反応に戸惑っていたのは当の選手たちだった。