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「帝京魂は石橋貴明さんのイメージが…」“強かった帝京”を知らない高校生が、あのユニフォームに“10個目の星”を刻みたい理由
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2022/08/17 06:00
帝京高校のユニフォームに刻まれる全国制覇の数を示した“星”。インターハイでは惜しくも20年ぶりの優勝を逃したが、着実にその時が近づいている
伝統と現在の潮流を繋ぐ日比監督の熱い思いがマッチしたことで、彼らは帝京に集い、そして徐々に帝京の一員としてのプライドが芽生え始める。
「『帝京魂』という言葉は、とんねるず石橋貴明さんの『リアル野球BAN』のイメージが強くて、(自分たちが口にすることに)パロディー感があった(笑)」と入学当時の思いを口にした大田も、「これまでの帝京として優勝を重ねてきた実績の裏にある、当時の選手たちが持っていた勝者のマインドを引き継いでいくことこそが、真の帝京魂だと思っています。多くの人たちに『帝京魂はまだ生きているよ』と知ってほしいですし、下の世代にも伝えていきたい。もう恥ずかしさは一切ありません」と、今では胸を張る。
その転機は、やはり昨年の「全国大会出場」が大きかった。
「インターハイに出場すると、どの記事を見ても『名門復活』『古豪復活』と書かれ、昔の試合映像がたくさん出てきました。街でも『全国、頑張ってな』とか『昔のように優勝してな』と声をかけられることも増えた。帝京って他の高校と違うのかも?と思うようになりました」(大田)
しかし、その11年ぶりのインターハイは1回戦敗退。期待が高まった同年の選手権は東京都予選・準決勝で敗退し、12年ぶりの出場とはならなかった。
「ここまで“伝統”ばかりに注目されるのか、という思いは正直ありました。何もかも“伝統”という言葉で片付けられ、自分たち自身に目を向けられていないと感じていました。ただ、これからの在り方、帝京というものをより冷静に客観視できたからこそ、最初は嫌だった“伝統”を自分たちが築いていこうと思えるようになりました」(伊藤)
「新しい帝京」を上書きしよう
新チームの立ち上げ時、キャプテン伊藤は仲間たちにこう語りかけた。
「僕らの手で“新しい帝京”の歴史を作り出そう。自分たちのサッカーで上書きをして、今の帝京を知らしめよう」
以前は何とも思わなかったカナリア色のユニフォームに袖を通すことに覚悟と責任を持った彼らは、日比監督のサッカーを体現した。それがプリンスリーグ関東で2位(9節終了時点)という成績に繋がり、そして、今回のインターハイ準優勝という結果に表れた。