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稲尾和久vs金田正一、どちらが上か? ベストシーズンを比べてみた…「8歳から漁の手伝い」「入団当初は打撃投手」知られざる“稲尾伝説” 

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太田俊明

太田俊明Toshiaki Ota

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photograph byBUNGEISHUNJU

posted2022/07/14 06:00

稲尾和久vs金田正一、どちらが上か? ベストシーズンを比べてみた…「8歳から漁の手伝い」「入団当初は打撃投手」知られざる“稲尾伝説”<Number Web> photograph by BUNGEISHUNJU

プロ野球史上No.1投手を探る旅。第4回で取り上げる投手は稲尾和久だ(1962年撮影。左は川上哲治監督)

 投球フォームは、まず爪先立った軸足から、ボールを持つ右腕を大きく後ろに引く。可動域の広さを感じさせるゆったりしたバックスイングが特徴だ。そして前方に体重移動しながら、ややサイド気味に腕をしならせて投げる。のちの巨人の大エース、沢村賞3度の斎藤雅樹に似たフォームといえるかもしれないが、強靭な下半身に支えられて、斎藤より腕が打者に向かって伸びるイメージがあった。

 史上最高の制球力を支えた足腰の強さは、8歳の時から手伝っていた父親の漁、特に全長5mほどの小さな舟の艪漕ぎで培われたという。夕刻、艪を漕いで沖に出て、漁の最中は獲物を探す父親の指示に従って舟を操る。漁を終えて岸に戻るのは早朝で、これを年に200日も繰り返した(出典元:『神様、仏様、稲尾様』稲尾和久/日本経済新聞出版)。

 揺れる小舟の上で艪を漕ぎ続けた経験は、足腰だけでなく、腕力、バランス感覚、体幹の強さ、さらには精神力の強化にもつながったに違いない。今なら塾通いに忙しい年ごろにこの鍛錬。時代が生んだ大投手といえるだろう。

金田vs稲尾…本格派と技巧派による“横綱対決”

 さて、本企画で現在チャンピオンベルトを保持する1958年の金田と、42勝をあげた1961年の稲尾の勝負である。

【金田】登板56 完投22 完封11 勝利31 敗戦14 勝率.689 投球回332.1 被安打216 与四球60 奪三振311 防御率1.30 WHIP0.83

【稲尾】登板78 完投 25 完封7 勝利42 敗戦14 勝率.750 投球回404.0 被安打308 与四球72 奪三振353 防御率1.69 WHIP0.94

 もしこれが同年の記録だとしたらどちらが沢村賞をとるか、という視点で両者を比べるわけだが、さすがは本格派と技巧派の横綱対決。現代では、全項目を満たすことが難しい沢村賞の選考基準(25試合登板以上、10完投以上、15勝以上、勝率6割以上、200投球回以上、150奪三振以上、防御率2.50以下)を二人ともはるかに凌駕している。

 数字をざっと見てわかるのは、稲尾がより多く投げ、より多く勝ったのに対して、防御率、WHIPで勝る金田は、ランナーを出さず、点を取られなかったということだ。被打率も0.65の金田に対して、稲尾は0.76。“打者圧倒度”では金田が勝るということになるだろう。

【次ページ】 最強チームでエース。大車輪の活躍を見せた“凄み”

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