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カープ秋山翔吾34歳「NPB復帰後の成績がMLB移籍前と同等以上」は新庄剛志、青木宣親ら少ないが…期待したい“未達成の偉業”とは
posted2022/07/12 11:00
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
秋山翔吾が古巣・西武ではなく、広島に入団したことについては、ファンは様々な感慨を抱いていることだろう。
宮崎県日南市南郷の春季キャンプで、ゴロの捕球について外野守備コーチを相手に長時間、話をしている秋山を見たことがある。腰の落とし方、グラブの差し出し方などについて熱心に議論していた。早くも広島で凄い補殺を見せた秋山だが、その守備は資質に加え、たゆまぬ研鑽の賜物だったと思う。
2015年、31試合連続安打が途切れた試合で、秋山は最終打席、自分の安打よりもサヨナラにつながる四球を選んだ。その理知的で真摯な姿勢が、西武ライオンズのチームカラーの一部になっていた印象だ。
西武は誠実に交渉に臨んだはずだ。しかし「予算以上の椀飯振舞をして選手を補強する」チームではない。その余裕があれば育成を優先する。条件的にはソフトバンクが一番だったのだろう。同い年でかつてハイレベルの首位打者争いをした柳田悠岐もいる。しかし、同じパ・リーグのチームに行くのも忍びない。そういうことで、広島に落ち着いたのではないかと勝手に解釈している。
丸の人的補償で広島に来た長野に続いて……
西武と広島はずいぶんチームカラーが違う。西武はかなり早くにトラックマンを導入しデータ野球へと舵を切っているが、広島は、今年にホークアイを入れたものの、どちらかと言えば従来の野球のスタイルを重視している。ファンはどちらも熱狂的だが、土地柄の違いもあり、応援風景はずいぶん違う。
しかし共通点も意外に多い。この2球団は宮崎県日南市で春季キャンプを張る「お隣さん」であり、この時期の両球団の選手は頻繁に交流している。日南市観光協会の事務所は2月になるとカープとライオンズのユニフォームを着る職員に二分される。また両チームともに手塩にかけた選手をFAや海外移籍で他球団に送り出してきた。ともに「去る者は追わず」の球団だった。
2年連続MVPに輝いた丸佳浩が巨人にFA移籍し、長野久義が人的補償でやってきた2019年の春季キャンプ、背番号「5」のユニフォームに身を包んだ長野がメイングラウンドに姿を現すと、スタンドから大きな拍手が起きた。本拠地広島のファンより「赤い」と言われるキャンプ地日南市油津のファンは「お客人、よく来てくださった」と長野を温かく迎えたのだ。鈴木誠也、菊池涼介などの主力陣も気さくに声をかけていた。
長野は日本大学時代の2007年、日本ハムの指名を蹴って社会人入りし、2年後巨人に入団。それくらい巨人にこだわりのある選手だった。人的補償で移籍するに際しては複雑な思いがあっただろうが、広島が温かく受け入れてくれたことで、以後も戦力としてキャリアを重ねている。
そういう意味では、秋山翔吾はいいチームを選択したと言えるだろう。しかしMLB、アメリカからNPBに復帰した選手のその後の成績を見ると、それほど甘いものではないともいえる。
MLBから日本に復帰した野手の“1年目成績”は?
MLBに移籍してNPBに復帰した野手は秋山で14人目だが、彼らの移籍前最終年の成績と復帰後1年目の成績を並べると以下のようになる。