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錦織圭、西岡良仁以下の若手が育たず…なぜ男子テニスは弱体化? 選手の証言「弱点のある外国勢がいなくなった」「アジアの大会中止が」
posted2022/07/09 17:00
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
NIKKAN SPORTS
ウィンブルドンの日本勢は大会9日目に青山修子がダブルスの準々決勝で敗れたところで、車椅子とジュニアを残して全員が姿を消した。今回は22歳の本玉真唯のグランドスラム初の予選突破といううれしい出来事があったが、その本玉が対戦相手の途中棄権によって得た1回戦勝利が日本勢のシングルス唯一の白星。1回戦で4人が全滅した全仏オープンから劇的に事態が好転したとはいえなかった。
ダニエルが語ったこの数年の変化
女子はまだいい。本玉のニュースもあったし、ランキング100位台には本玉のほかに20歳の内島萌夏、21歳の内藤祐希がいて、ふたりとも全仏では予選の3回戦まで進んだ。ランキングポイントのつかない今回のウィンブルドンを欠場した大坂なおみも、アップダウンがあるもののモチベーションさえ失わなければ、得意のハードコートを軸に本人が目指すナンバーワン返り咲きに期待はできるだろう。
より深刻なのは男子だ。絶対的エースだった錦織圭は左股関節の故障からまだ復帰できず、ツアー離脱は8カ月以上に及び、ランキングは114位まで落ちている。最高48位までいった西岡良仁も今は101位で、日本男子の名がトップ100から消えた。100位台は西岡と錦織に加えて118位のダニエル太郎の3人だけだ。200位台には5人いるが、若手予備軍が不足している。
2015年の全仏オープンで日本男子5人が本戦入りするなどし、日本男子最強といわれた時代を楽しんでいたのはそう遠い昔の話ではないはずだった。錦織という求心力があり、5歳年上の添田豪がナンバー2としてグランドスラムの常連レベルにまで成長してリーダーシップを発揮し、伊藤竜馬や杉田祐一という錦織と同世代に高い競争力が生まれ、さらに下の世代から西岡良仁やダニエル太郎が食らい付いていった。松岡修造と錦織しかいなかったATPツアー優勝者のリストに、2017年からわずか1年数カ月の間に杉田、ダニエル、西岡と3人が次々と加わった。仲間意識とライバル意識がバランスよく機能し、相乗効果を生んだ奇跡の時代だった。