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錦織圭、西岡良仁以下の若手が育たず…なぜ男子テニスは弱体化? 選手の証言「弱点のある外国勢がいなくなった」「アジアの大会中止が」  

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山口奈緒美

山口奈緒美Naomi Yamaguchi

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posted2022/07/09 17:00

錦織圭、西岡良仁以下の若手が育たず…なぜ男子テニスは弱体化? 選手の証言「弱点のある外国勢がいなくなった」「アジアの大会中止が」 <Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

2016年デビス杯のワールドグループプレーオフ、ウクライナに勝利した日本チーム。左から西岡良仁、杉田祐一、錦織圭、ダニエル太郎

 その後、西岡より若い選手は一人もグランドスラムの舞台に立っておらず、その西岡も26歳になった。ツアーではもう若手と呼ばれる年代ではない。今回4年ぶりにウィンブルドンに帰ってきたダニエルは、この数年の男子ツアーの劇的な変化を肌で感じているという。

「2018年には僕はまだ若いほうだったけど、2019年にそれがいきなり変わった。コロナの中断のあとはさらに若い選手がたくさん出てきた感じ。トレーニングの時間ができたことも理由かもしれない。イタリアとかフランスのチャレンジャー(下部ツアー)とかに行ったら、誰も知らないような19歳でもすごいうまい選手がたくさんいる。あとは、何年か前に比べると、みんながほとんどなんでもできる。弱点のある選手がいなくなったと思います」

西岡が英語で訴えたこと

 テクニック系やストローカーでもショットに威力があるし、パワー系の選手もミスをしないし、小技もできるという。日本選手は小柄で非力なタイプが多いが、テクニックやしぶとさを磨いて、体格や力で負ける相手からも勝機を見出してきた。しかし誰にも隙がなくなり、これまでと同じでは生き抜けなくなった。

 コロナ禍で日本をはじめアジアが受けた打撃も大きかっただろう。西岡はことあるごとにその件について不満を漏らしている。今回も「常に僕たちはアメリカやヨーロッパに遠征しないといけない。コロナでアジアで大会が行われなくなって、今も再開されないままだ」と英語で訴えた。その通り、2020年の3月からのツアー中断を経て8月に再開されてもうすぐ2年になるが、アジアではATPもWTAも行われず、ITFサーキットもジュニアの国際大会も一部開催はしているが元の姿には戻っていない。

 世界から遅れをとっている間に、ツアーはダニエルも指摘したように急速に若返りが進んだ。たとえば3年前のこの時期のランキングではトップ10に5人、トップ20にも10人と30代が半数を占めていたが、今はトップ10にノバク・ジョコビッチとラファエル・ナダルの2人だけ、トップ20にも5人しかいない。若手の勢いが増している。

イタリア人プレーヤーに話を聞くと…

 中でもイタリアは、今若手がもっとも成功している国である。男子ツアーには21歳以下のみで争う年間ランキングがあるが、そのトップ20に7人ものイタリア勢が名を連ねる。ちなみに日本は、2019年にウィンブルドン・ジュニアの優勝で注目された19歳の望月慎太郎がようやく49位に入るという状況である。

「どんな現象にも理由はある」

【次ページ】 イタリアが若手育成のために取り組んだこと

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