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錦織圭、西岡良仁以下の若手が育たず…なぜ男子テニスは弱体化? 選手の証言「弱点のある外国勢がいなくなった」「アジアの大会中止が」
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2022/07/09 17:00
2016年デビス杯のワールドグループプレーオフ、ウクライナに勝利した日本チーム。左から西岡良仁、杉田祐一、錦織圭、ダニエル太郎
そう語るのは、世界ランク13位の20歳、ヤニク・シナーだ。
「イタリアには多くの大会があって、若い選手はそこでワイルドカードをもらえるチャンスがある。たとえ負けたとしても、大会に残っていれば自分より上の選手と練習をするチャンスがある。これはレベルアップのためにとても大きな経験なんだ。若い選手は自分こそがそのチャンスを得ようと必死でがんばるから、互いに上達する」
先に触れた21歳以下のランキングは最終的に11月に開催される『ネクスト・ジェン・ファイナルズ』につながるが、8人が出場資格を得るこの大会の舞台はイタリアのミラノだ。開催地特権で自国選手にワイルドカードが一つ与えられており、シナーはそこで2019年にワイルドカードを得て優勝につなげた。また、半世紀以上の歴史を持つ男女共催の『イタリア国際』がローマにあり、さらには『ATPファイナルズ』も昨年から5年契約で招致した。また、月平均3大会というハイペースでチャレンジャー大会も開催されている。ちなみに日本には年間4大会しかなく、それも過去2年は中止になった。
イタリアが若手育成のために取り組んだこと
『ガゼッタ』紙のルカ・マリオアントニオ記者は、イタリア・テニスの戦略についてこう説明した。
「イタリアも30年前は年に7大会くらいしかチャレンジャーはなかったんだ。それが徐々に増えていって今の数になった。自国の選手がポイントを稼ぎやすい環境を国内に整えることは、若手の育成には欠かせないことだったからね。イタリア・テニス連盟はローマの大会で得た収益を、大会を増やすことに使ったんだ。同時に、ファンには一流のレベルのテニスをより多く見せる必要もあった。テニス人気が高まれば、結局選手のモチベーションを上げることにもなって強化につながる」
もちろん若手のみならずベテランも奮起する。また、さらに斬新な試みも行なってきた。世界中のテニスを24時間放送するテニス専用チャンネル『SuperTennis』の運営を、連盟自らの手で2008年に開始。これによって新たなファン層を広げ、テニスをサッカーに迫る人気スポーツに押し上げた。改革とは、これくらい大胆かつ計画的でなければなし得ないのだ。
日本にもこれまで、90年代に伊達公子が牽引したテニスブームがあり、錦織が作った夢の時代があった。そこから何が残っただろう。時代が過ぎゆくたびに、同じことをぼやいている———。