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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
「お金にならないと意味がない」元サッカー日本代表・高原直泰43歳は今…沖縄でコーヒー農家になっていた「年間5000杯分が目標です」
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNanae Suzuki
posted2022/07/09 11:02
元サッカー日本代表・高原直泰(43歳)。沖縄SVのCEOも務める高原は名護市でコーヒー作りに取り組んでいる
そもそも高原が東京での生活を捨てて沖縄に移り住み、沖縄SVを立ち上げたのは『サッカーを中心とした地域創生』の役割を期待されてのこと。その成り立ちを考えれば、実った果実だけをもって万々歳といかないのは当然かもしれない。
「まさかこんなにがっつりコーヒー栽培をやるなんて思ってもみませんでしたね」
J1清水などを経て2018年から沖縄SVに加入した岡根直哉も高原の農業に対する真剣さに驚かされた一人だ。
沖縄SVでは選手やチームスタッフもコーヒー栽培に従事している。当然、岡根もそこに携わってきた。種植えの際には、190cmの大型ディフェンダーがその巨体を小さくかがめ、汗をだらだらと流しながら、小さな鉢の中に種を植える作業を黙々とこなした。ある意味、試合以上の集中力を要求される時間だった。
「植える時には種の深さ、種の向きにも注意が必要。だからミスしたらあかんし、高さんがめちゃめちゃ集中しているからミスられへん雰囲気がすごいんです。結構ピリピリしてますよ(笑)」
いい加減に取り組む人間がいれば、試合中の如く容赦なく声が飛ぶのだという。
「そんな気持ちでやるんだったらやらなくていい!」
その上でこう諭される。「これでチームにお金を払ってもらってるし、チームが将来的にこれで稼いでいく可能性もあるんだぞ」と。
月5000円でも「めちゃくちゃ高い」
チームで携わるうちに農業に関心を抱いた岡根は、自らも友人のバリスタと一緒にコーヒーを栽培してみようと思い立った。ところが、予想以上に早い段階でハードルが待っていた。
岡根はまず約7000平米の土地を月5000円、年間6万円で借りた。安い、と早合点しそうになる。
「僕らも素人だからめちゃ安いやんって借りたんですけど、農業やっている人からしたらめちゃくちゃ高いみたいで。普通は年間数千円だって言われました」
値段を吹っ掛けられただけではなかった。そこには思わぬ先住者がいた。ウコンである。
「しかも白ウコンという一番使い道のない品種で。借りてから知ったんですけど、ウコンって根絶は難しいらしいんですね。そんなん抜いたらええやんと思ったけど、少し欠片が残ってたらまた生えてくる。だから、ちょっと頓挫しているんです。農業には農業の世界のルールがある。コーヒー栽培をしやすい土地を素人が見つけるのも難しい。新規参入がめちゃめちゃ難しいんですよ。でも高さんなら名前もあるし、会社としての信頼もありますからね」
高原「目標はまず5000杯分です」
名護から20kmほど北東にある大宜味村にも、沖縄SVのさらに大規模な農園がある。こちらはぶっとい蛇が道端の草むらでとぐろ巻くやんばるの森の奥深く。元々シークワーサー農園だった場所に、名護と同じようにアラビカ種の数種類の苗木を植えて育てている。だが土壌や日照の度合いなどによって生育状況はバラバラ。名護とも違うし、大宜味の中でもばらつきが出る。