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森保ジャパンの課題を「ゴール期待値」で検証…3失点より深刻なチュニジア戦、インサイドMFを順位化すると1位鎌田大地、2位以降は?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto/JMPA
posted2022/06/23 11:00
鎌田大地や田中碧らが起用されているインサイドハーフ。彼らの6月シリーズの「xG=ゴール期待値」はどうだった?
「インサイドハーフはあそこ(ゴールに近い位置)に入っていかないとダメだと思う。4-3-3のチームと試合をしても、強いチームはインサイドハーフの選手がああいうところに入っていって点を取っているイメージがあったので」
田中碧がドイツで見せていた“大きな変化”とは
所属チームでの1年間で最も大きな変化を見せたと言えるのが田中碧だ。
シーズン終盤にはペナルティエリア内へ入っていく姿が特に目立った。8月から2月頭まで指揮を執っていた前監督の下でのスタメン時に比べ、新監督の下ではスタメンを飾った2月27日からシーズン終盤となる4月末までの期間では、xGが約2倍のペースに激増したほど。
変化の理由を本人はこう語っている。
「日本にいる時よりも、ゴールの価値が自分の中ですごく変わりました。今までは90分を通していかに(多くのプレーに)関わり続けるか、勝利に導けるかを大切にしてきましたが、向こうへ行って、90分のほとんどがダメでも点を取ることが評価されて、サッカーの中ではゴールが非常に重要で試合を動かすものなのだなと、改めて感じることができました」
このようにシーズンを通して意識を変えていった田中が、所属クラブ→今回の代表戦におけるxGの伸び率が、5人の中でトップだったのは決して偶然ではない。
「xG」が下がった原口は「スコアポイント」に注目
先に挙げた5人のなかでは、ウニオン・ベルリンの原口だけが所属クラブからxGが下がっている。最大の原因は今シリーズで放ったシュートがわずか1本だったからだろうか(現状ではシュート以外のデータと上手く連動できていないのがxGの課題だ)。
ただ、原口は別の数値で結果を残している。
ゴールに直接絡むプレーでどれだけ貢献したのかを示し、ドイツでよく用いられる「ゴール数とアシスト数」を足した「スコアポイント」のランキングは以下の通り。
1位 鎌田 2P+1PK獲得
2位 原口 2P
3位 田中 1P
3位 久保 1P
5位 柴崎 0P
原口は2位につける。何より、現時点では所属クラブでインサイドハーフとして出場する機会が5人の中で最も多く、ウニオンでのプレーを代表に還元しようと燃えている。
ウニオンでは――原口が挙げた1つ目の得点パターンである――フォワードとインサイドハーフが絡んだ速攻でゴールを決めるシーンが多い。特に、インサイドハーフで原口とコンビを組むことの多かったプレーメルは、今シーズンのリーグ戦29試合で8得点だ。原口はライバルから、多くのものを学んだという。
「プレーメル自身の凄い能力で取ったゴールは1点か2点くらい。あとは最後まで走りきって、詰めて決めたようなものが多かった。インサイドハーフでもあれだけ点が取れるのだとすごく勉強になりました。来シーズンは彼がいなくなる分(*ホッフェンハイムへ移籍)、他のインサイドハーフの選手が得点を求められると思うので、僕はそこを伸ばしていきたい」
このように、選手たちは置かれた環境と場所で、得点力に磨きをかけようとしている。
カタールW杯は従来の大会とは異なり、ヨーロッパのシーズンの最中に開催される。大会前の長期キャンプを行なう時間がないため、本大会まで所属クラブで過ごす時間が大きな意味を持ってくる。
支配率やシュート数のような「量」によって攻守の優劣をざっくり測るのではなく、xGが表わすシュートの「質」から攻守の質について考え、成長するための燃料にしていく。厳しい組み合わせになったW杯で結果を残そうとする日本代表に求められるのは、そのようなどん欲で野心的な姿勢なのだ。
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