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オシム・ジェフの本質は「考えて走る」にあらず!? 20年前に展開していた“未来のサッカー”とは《オシムに学んだ4人の証言》
posted2022/06/16 17:01
text by
細江克弥Katsuya Hosoe
photograph by
Kyoji Imai
6月13日に発売された『Number PLUS イビチャ・オシム 日本サッカーへの遺言。』にて、オシムが率いた2006年のジェフ千葉にまつわる記事を書いた。
題材としたのは同年5月3日の「J1第11節浦和レッズ戦」。代表クラスがズラリと顔を並べ、半年後にはJ1初優勝を成し遂げる浦和に対して2-0と完勝したこのゲームは、ジェフ千葉時代におけるオシム・サッカーの理想形であり、最高到達点だった――。そんな仮説を検証するべく、羽生直剛、巻誠一郎、佐藤勇人、04年までコーチを務めた江尻篤彦の4人に話を聞いた。
とんでもない勘違いだった
ちなみに取材者である僕自身は、この試合をリアルタイムで観ていない。
本拠地フクアリに足を運び始めたのは翌2007年のこと。つまり2006年夏に幕を閉じた“栄光のオシム・ジェフ”をただの一度も体感していないのだが、チームを追いかけ始めた翌年以降はもちろん、2014年にクラブオフィシャルライターの立場を預かってからは特に、何度も、本当に何度も「イビチャ・オシム」の存在を感じてきた。オシムが離れて何年経っても、その名前が持つパワーが色褪せたことはおそらく一度もない。
ただし、そのほとんどがネガティブな意味においてだ。
2009年のJ2降格から約12年半。過去と現在を比較して苦しむ選手、苦しむスタッフ、苦しむサポーターの姿をずっと見てきた。だから逆説的に、たとえ“オシムのジェフ”を体感していなくともその偉大さをはっきりと想像することができたし、その価値を十分に理解することができていた――と、ずっとそう思っていた。
とんでもない勘違いだった。
取材に先立って、2006年5月3日のジェフ千葉vs浦和レッズを初めて観た。
圧巻だった。“オシムのジェフ”の迫力は、こちらの想像をはるかに超えていた。