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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ベンゲル仕込みの采配で熱い人」勝負師・大岩剛監督のパリ世代に感じる“サッカーIQ” 日韓戦は「経験を積みに来たわけではない」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFC
posted2022/06/12 17:01
U-21日本代表を率いる大岩剛監督。現役時代に積み上げたキャリアを指導者としてどう生かすか
現在のチーム力を測るうえで試金石となったのは、第2戦だった。実はU-23サウジアラビア代表とは3月のドバイカップ決勝で対戦している。1-0と勝利したものの、先制したあとは押されっぱなしの展開で、かろうじて掴んだ勝ち星だった。
しかも、今大会のサウジアラビアには、ドバイカップに参加していなかったA代表の選手も数人加わっている。チーム力の大幅アップが予想されただけに、エースストライカーの細谷真大は「ドバイカップでは後半押し込まれたので、次は自分たちが握れる時間を増やしたい」と必勝を誓った。
そのサウジアラビア戦では、大岩監督による周到な対策が見てとれた。
「センターバックのふたりにヘルプをつけてスムーズにいくように、全体の立ち位置を変えた」
戦況や相手に応じて立ち位置やビルドアップを変える
松岡大起をアンカーに置く4-3-3で臨んだUAE戦とは異なり、サウジアラビア戦は藤田譲瑠チマと山本理仁を2ボランチにした4-4-2でスタート。さらにビルドアップの際には藤田が左センターバックと左サイドバックの間に落ちてかりそめの3バックと化し、サウジアラビアの2トップによるファーストプレスを回避してボールを前進させたのだ。左サイドバックの加藤聖が振り返る。
「僕とアンリの間に譲瑠が落ちて、僕が高い位置をとって(左サイドハーフの)光毅が中に入る形をとった。高い位置でボールを受ければ、斜めに入ることができるので、そこの意思統一はよくできていた」
サウジアラビア戦に限らず、戦況や相手に応じて全体の立ち位置やビルドアップのスタイルを変えていくのは、このチームの武器のひとつ。もちろん、クラブチームのようにスムーズにいかない場面もあるが、サッカーIQの高さを感じさせるシーンも少なくない。
代表チームは時間がない。だからこそ
実は大岩監督は就任当初、チームづくりについてこんな見解を示していた。
「選手が身につけていないものを植え付けられるほど、代表チームは時間がない。だから、最大公約数をうまくまとめるような……それも簡単ではないですが、そうしたチームづくりにせざるを得ないと思います」
つまり、こうしたサッカーが、パッと集まる代表チームで表現できるということは、すでに身につけている選手が多いということだ。