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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「ベンゲル仕込みの采配で熱い人」勝負師・大岩剛監督のパリ世代に感じる“サッカーIQ” 日韓戦は「経験を積みに来たわけではない」
posted2022/06/12 17:01
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFC
17時を過ぎてもなお強い日差しが降り注ぐウズベキスタンの首都、タシケント。トレーニングを終え、練習場脇の木陰で取材陣に囲まれた大岩剛監督は、驚くべき事実を明かした。
2日前に行われた大会初戦で、コンディションや試合勘に不安のある選手たちをあえて起用したというのだ。
実戦から遠ざかっていても斉藤とチェイスを起用
「試合からだいぶ遠ざかっている選手がいた。それ(ゲーム)をやらないとコンディションを上げられないので、それも計算して選ばないといけない。かといって最初の試合が重要でないわけではなく、私たちは最初の試合を重要視してきた」
実戦から遠ざかっていたのは欧州組のふたり、斉藤光毅とチェイス・アンリだった。斉藤は所属するロンメルの試合が4月半ばに終了している。チェイスは尚志高校を卒業後、4月半ばにシュツットガルトへ移籍したため、最後に公式戦を戦ったのは3月下旬のドバイカップまで遡らなければならない。
6月3日のU-23UAE代表との初戦に起用されたふたりは実際、本調子から程遠い出来だった。斉藤はハーフタイムにベンチに下がることになり、チェイスは失点に絡んでしまった。
そうした可能性も大岩監督は想定済みだったはずだが、あえて彼らを起用した。大会で優勝するためには、少しでも早く彼らを復調させる必要があるからだ。
とはいえ、2戦目の相手は優勝候補のU-23サウジアラビアだっただけに、もしUAEに敗れれば取り返しのつかないことにもなっただろう。そして、UAEも手強い相手だったのだ。
それでも2-1と拮抗したゲームを制してみせた。
その大胆かつ冷静な采配と勝利を引き寄せる握力の強さに、勝負師の一面を感じずにはいられなかった――。
「熱い人」大岩監督がサウジ戦で見せた周到な対策とは
ウズベキスタンで開催されているU23アジアカップ。2年後のパリ五輪への強化の一環として2歳下のU-21代表で参加している日本は、U-23UAE代表に2-1、U-23サウジアラビア代表と0-0、U-23タジキスタン代表に3-0と勝利し、2勝1分の成績でグループステージを突破した。
チームを率いるのは、2017年から3シーズン、鹿島アントラーズを率いた大岩監督だ。
力強い言葉とオーラを持ち、選手たちからは「熱い人」「言葉で奮い立たせてくれる」「ドシっとしていて、チームがピリッと引き締まる」と信頼を寄せられている。