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Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「和製ハーランドじゃなくて“怪物・中島大嘉”に」デカくて速い20歳FWの魅力は“ドラゴン久保竜彦級”のスケールと茶目っ気
posted2022/06/12 17:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
AFC
その瞬間、ブニョドコルスタジアムの記者席にいたある者は拍手し、ある者は立ち上がり、ある者は「やったー!」と声をあげた。
U23アジアカップのグループステージ、U-23タジキスタン代表との第3戦の後半アディショナルタイム。スルーパスに抜け出した坊主頭のストライカーが鮮やかなループシュートを決めたとき、2-0とすでに勝負は決していたが、少数の日本人サポーターが陣取るゴール裏の一角だけでなく、記者席も祝福ムードに包まれた。
数分前にもゴールネットを揺らしてガッツポーズを披露したのだが、VARによってオフサイドと判定され、ゴールが取り消しになっていた。だから、正真正銘のゴールを称える空気があったのはもちろんだが、なぜか応援したくなる雰囲気を選手自身が漂わせている。
そんな不思議な魅力を持つ男――中島大嘉(なかしまたいか)は国見高校から北海道コンサドーレ札幌に加入したプロ2年目の若者だ。
「身長188cmで50m5秒台」という身体能力
同高から高卒でプロになるのは13年ぶりのこと。ストロングポイントは身長188cmの体格を生かしたヘディングで、「身長があって、身体能力も高いので、人より高く飛べて空中で止まれる」と本人も自信を覗かせる。
さらには「50m5秒5~6」(自己申告)というスプリントも大きな武器だ。個人的には、元日本代表の「ドラゴン」こと、久保竜彦を初めて見たときのようなスケール感とインパクトを覚えた。
加速力のある裏への抜け出し、迫力満点の空中戦、前線での圧倒的な存在感……。
誰が呼んだか、和製ハーランド――。
もっとも、本人は世界最高クラスのストライカーになぞらえられることが、お気に召さないようだ。
「いま、『和製ハーランド』って言われていますけど、そうじゃなくて、中島大嘉のブランドを確立したい。和製ハーランドっていう記事を見るたび、俺もまだまだだな、頑張ろうって。『地球製・中島大嘉』って言ってたんですけど、先輩にめちゃめちゃバカにされました(笑)」
大久保嘉人を越えてほしい…は「ホンマなんすかね?」
国見高サッカー部出身である父親は、大久保嘉人のひとつ先輩だった。「大嘉」という名は大久保嘉人を超える選手になってほしい、という父の願いから――。
多くのメディアでそう報じられてきたが、本人は茶目っ気たっぷりに疑問符を投げかける。