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〈森保J、ブラジルに健闘も“予行演習”失敗〉ドイツとスペイン攻略法は「我々の形」1択ではない? 番狂わせの見本は“意外な欧州中堅国”
posted2022/06/13 11:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Kiichi Matsumoto/JMPA
あっという間の90分だった。ベストメンバーのブラジル代表を国立競技場に迎え、日本代表も同じように指揮官が最高と考える先発を並べて善戦した。ネイマールのPKによる1点だけを喫した0-1の敗北だ。世界随一の強豪を相手に、たくさんの見どころを作った日本の健闘を讃えないわけにはいかない。
健闘でも勝ち点ゼロは「失敗」を意味する
しかし──。
周知の通り、今年11月に開幕するカタールW杯で、日本はスペインとドイツと同組になった。つまり目標の8強入りを果たすには、グループEで少なくともそのどちらかを上回って勝ち抜ける必要がある。現在のFIFAランキングでスペインは7位、ドイツは12位ながら、どちらもチャンピオンズリーグ優勝経験を持つ指揮官が統率する優勝候補のふたつだ。
これら列強国との本番での対戦を睨み、同格のブラジルとの強化試合を組んだはずだ。とすれば、面白い接戦を演じたとしても、黒星は勝ち点ゼロ、すなわち失敗を意味する。
「勝てなくて非常に残念です」と試合後の会見で森保一監督は話した。「選手たちが我慢強く、粘り強く戦ってくれたのに、結果が伴わず、残念に思います。惜しいとかではダメだとわかっているつもりですけど、選手たちが今できるベストを尽くしてくれたことは、我々の未来の勝利に繋がるところもあった」
実直な監督の率直な感触だろう。楽観も悲観も要らない。5カ月後に迫る本大会で、長年の目標を実現させるべく、やるべきことを粛々と積み上げていく。久しぶりの対面の記者会見では、指揮官のそんな覚悟が見て取れた。
では、外野の私たちにできることは何か──。日本代表が中東の地で金字塔を樹立するために、ファンもメディアもそれぞれの方法で、少しでも力になれることはあるだろう。個人的には今回の試合のバックグラウンドをもとに、ひとつのケーススタディを提示してみたい。
イングランドに勝利したハンガリーに注目してみた
この国際マッチウィークに、似たような力関係の対戦でアップセットを起こした代表チームがある。UEFAネーションズリーグのリーグAグループ3の初戦で、イングランドを1-0で下したハンガリーだ。