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「三笘薫は天才肌、田中碧と旗手怜央は…」“32歳で指導歴10年超”吉田勇樹コーチに聞く「フロンターレから逸材が生まれるワケ」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byKAWASAKI FRONTALE
posted2022/04/13 17:45
2017年、当時プロ1年目の田中碧(写真右)らと笑顔でトレーニングに励む川崎フロンターレの吉田勇樹コーチ
若手の中には、レギュラーになってからも吉田からの継続的なサポートを受けたがる選手も少なくない。例えば今オフに海外移籍した旗手怜央がそうで、個別に編集した映像のサポートを最後まで希望し続けた。
「レオからは2年間、ほぼ毎試合『勇樹さん、次の試合も映像よろしく!』と言われていました(笑)。試合の振り返りはチームでもやりますけど、選手に個別で映像を見せたりとかは、鬼木監督からもどんどんやってくれと。去年の解散式では、『勇樹さん、本当にありがとう!』と言ってくれました。そんな彼もいまやセルティックですからねぇ」
なぜフロンターレは主力が抜けても強いのか
――なぜ川崎フロンターレは、主力が移籍し続けても強いのか。
サッカーファンの多くは、きっと不思議に思っているに違いない。
リーグ優勝を遂げた2020年のオフには守田英正、21年の夏には田中碧と三笘薫、そしてリーグ連覇を達成した今オフには旗手怜央が海外に移籍した。4人は現役の日本代表である。日の丸を背負うような主力が相次いで移籍していくが、それでもチームは崩れない。今年も首位を走っている。
強いチームであり続けている最大の要因は、何と言っても鬼木達監督の指導力とマネジメント力だろう。長らく無冠だったクラブに4度のリーグ優勝をもたらし、常勝軍団を作り上げた指揮官の手腕を抜きには語れない。
それと同時に、鬼木監督はスタッフ陣への信頼と感謝のコメントもよく口にしている。
「出場機会を与えられていない選手がどれだけ成長できるかは、コーチングスタッフの仕事だと思っています」と、裏方に徹する彼らの働きぶりを、メディアの前で褒め称えることも珍しくない。試合に絡むことの少ない控え選手のクオリティが高くなければ、過密日程の続く長いシーズンを勝ち続けることはできないことをよくわかっているからである。
実際、昨シーズン終盤であれば、大卒新人の橘田健人が急成長を遂げて中盤に台頭し、宮城天や知念慶といった主力ではなかった面々が劇的な決勝弾を挙げてリーグ連覇に貢献した。強いチームには、勝負所で活躍するバックアッパーが必ず控えているものだ。