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「三笘薫は天才肌、田中碧と旗手怜央は…」“32歳で指導歴10年超”吉田勇樹コーチに聞く「フロンターレから逸材が生まれるワケ」
posted2022/04/13 17:45
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
KAWASAKI FRONTALE
春の陽射しを感じさせる川崎フロンターレの麻生グラウンド。
2時間ほどの全体練習が終わると、いくつかの輪に分かれて若手たちの居残り練習が始まっていく。シュート練習に励むグループもあれば、「止める・蹴る」のパス&コントロールを磨くグループもある。
こうした輪とは少し離れた場所で、新人の左サイドバック・佐々木旭が自主練習に取り組んでいた。傍にいたコーチからバックステップの踏み方など身振り手振りを交えたレクチャーを受けながら、ボールを受ける動きの試行錯誤を繰り返していく。次第に鬼木達監督も近寄ってきて、明るい声でアドバイスを交えながら、その自主練習を見守っている。麻生の居残り練習では、見慣れた景色だ。
この時、佐々木に付き添って指導をしていたのが吉田勇樹コーチである。
まだ32歳だが、指導者生活は今年で11年目。現役引退後、スクール・普及コーチ、育成部コーチを経て、鬼木体制の始まった2017年シーズンからアシスタントコーチとして入閣した。
全体練習後、出場機会の少ない若手に個人指導をするのは、吉田にとってのルーティーンのようなものである。伸びしろの多い彼らの向き合うべき課題を抽出し、とことん付き合ってサポートする。この日は、それが佐々木旭だった。
「旭にはキャンプのときから映像を見せたり、こういう風にできたら良いよね、という話をよくしていました。前の試合の反省として『ボールの受け方をやっていきたい』と話はしていて、そこは足りていないので、『じゃあ、やろうよ』と」
今年、流通経済大学から入った佐々木旭は、入団当初はプロの壁に悩んでいたという。だがリーグ3戦目となる鹿島アントラーズ戦でプロ初先発を果たすと、そこで初得点を記録。現在は試合に出ているなかで、楽しみながら課題に向き合えている状態だと吉田は話す。課題を克服した若手たちがチャンスを掴み、レギュラー争いを活性化させていく。こうした循環を作り出すことで、チーム全体の選手層を底上げしていくのが吉田の役目と言える。