田中碧、旗手怜央…飛躍した若手の共通点とは

　特に田中は、プロ1年目は全く出場機会がなく、チームの紅白戦にも入れないことが多かった。それでも地道な努力を継続し、2年目でプロデビューを飾ると、デビュー戦で初ゴールを記録。そして3年目の2019年には守田英正とレギュラー争いを繰り広げるまでに成長した。まだ何者でもない時代から、麻生でもがく田中の姿を吉田はずっと見てきた。

「僕が入った2017年は、1年目のアオがメンバーから外れてやることが多かったんです。入ってきたときは『正直、どうなんだろう？』と思っていました。ただ彼は努力の量が凄かった。筋トレもそうだし、全体練習が終わっても、一番遅くまで居残り練習をやるぐらいでした。試合に出ているときも出ていないときも、その姿勢はそんなに変わらなかった。レオもそれに近い感じでしたね。カオル（三笘薫）はちょっと天才肌でしたが、アオやレオとは違う、彼なりのアプローチで努力していました。きっとカオルにはカオルのリズムがあったんでしょうね」

ジョーカーとして日本代表をW杯出場に導いた三笘薫　©Takuya Sugiyama/JMPA

　今では麻生グラウンドで育った選手が、当たり前のように海外に旅立ち、日の丸をつけて活躍する時代となった。振り返ってみると、突き抜けるように伸びていった若手には、ある共通点があったと話す。

「本気で決めた目標がある選手は伸びます。これは間違いないですね。選手なのでいいとき、悪いときがあります。でも、目標があるからブレない。田中碧、旗手怜央、三笘薫がそうですけど、海外でやりたいという大きな目標がある選手は、その目標に向かってどうやるのかを常に考えている。それがブレない選手は伸びていきますね。それは、この6年で確信に変わった部分です」

　麻生で、もがいて、もがいて、もがき切る。

　そんな時期を過ごして初めて見えてくる景色が、きっとあるのだろう。

　3連覇を目指すチャンピオンチームの舞台裏には、麻生グラウンドで研鑽を積み続けている若手たちがいる。そんな彼らの居残り練習の傍らでは、今日も吉田勇樹コーチの明るい声が響き渡っている。＜#2、#3へ続く＞

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