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「相手の子どもをののしる親」「コンニャクで6キロ減量」柔道の小学生全国大会廃止、“過熱する”大人たちの本音「悪魔的な魅力あった」 

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塩谷耕吾

塩谷耕吾Kogo Shioya

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posted2022/04/14 11:02

「相手の子どもをののしる親」「コンニャクで6キロ減量」柔道の小学生全国大会廃止、“過熱する”大人たちの本音「悪魔的な魅力あった」<Number Web> photograph by KYODO

全柔連は「行き過ぎた勝利至上主義」を理由に毎年8月の全国小学生学年別大会を廃止すると発表した(※写真はイメージ。本文とは関係ありません)

 益子さん自身は中学時代にバレーボールを始めたが、指導者に毎日ぶたれ、怒られて育ったという。また、30代の元日本代表選手と話すと、小学校の全国大会に出場した際は、当時から身長の高かったその選手が、ひたすらスパイクを打ち続けて勝ち上がったと聞いた。体の負担は大きくて、小学生のころから整体に通っていたと聞き、驚いたという。

 2015年、指導者が怒ってはいけないという特別ルールをもうけた「益子直美カップ」を創設して全国で大会を開き、子どもに対する過度な勝利至上主義からの脱却を図ってきた。ただ、強権的な指導の是正を促すために「自分の体験を話そうとすると、トラウマが顔を出し、つらくなった」。保護者からは監督が怒らなくなると「子どもが精神的に弱くなる」などと、クレームを受けることは少なくなかったという。十分な反論ができなかったことから、スポーツメンタルコーチングや、アンガーマネジメントなど、指導理論を学び、「選手自身が考え、前むきに取り組む」ことの重要さを説き、少しずつ考え方が浸透してきた実感はあるという。

「過去に実績のある競技が仕組みを変えたりするのはすごく難しい。先を越されたじゃないけど、柔道界に変化があった。バレー界も変わるチャンスだと思う」と話す。

 あるスポーツ団体の幹部も「小学生の全国大会をどうしようかという話題は、最近は会議でよく出てくる」と明かした。ただ、単純に決断できる問題でもないという。「だいたいの大会はスポンサーがついており、簡単にはやめられない現実がある。また、大会に出るために競技団体に登録している選手がほとんど。大会がなくなると、小学生の登録費がなくなり運営が立ちゆかなくなる団体もある」

 柔道界が一石を投じた小学生の全国大会のありかた。日本におけるスポーツのとらえ方を見直すテーマでもある。このテーマがスポーツ界全体に広がっていくかは、まだ不透明な部分がある。

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