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「相手の子どもをののしる親」「コンニャクで6キロ減量」柔道の小学生全国大会廃止、“過熱する”大人たちの本音「悪魔的な魅力あった」
posted2022/04/14 11:02
text by
塩谷耕吾Kogo Shioya
photograph by
KYODO
1月下旬、SNS上には一部の少年柔道指導者の困惑が漏れ出していた。
「また小学生が犠牲になる」「子どもが目指す大会がなくなるとは」
このころ、全日本柔道連盟(全柔連)のホームページで2022年度の予定が更新され、毎年8月に開催されてきた全国小学生学年別大会に「※代替イベントに変更」と付記されていたのが原因だった。この大会は全柔連が主催する小学校5、6年生を対象にした個人戦の全国大会。コロナ禍による大会自粛なのか、一時的な措置なのかなど、理由や詳細が分からず、様々な臆測を呼んでいた。
全柔連が、都道府県連盟宛てに「全国小学生学年別柔道大会について」という通知文書を出したのはそれから約1カ月半がたった3月14日。
「本年より、全国小学生学年別柔道大会は廃止することと致しました」とし、その理由を「行き過ぎた勝利至上主義が散見される」とした。
そのニュースを3月18日に朝日新聞デジタルが配信すると、柔道界、スポーツ界の枠を越えて、多くの反響があった。
「#勝利至上主義」はツイッターのトレンドワードとなり、「英断だ」「他競技にもこの波が広がっていけば良い」などど全柔連の決断に対して肯定的な意見が大半を占めたのは、少年柔道における一部の“大人”の過熱ぶりが明らかになったからだろう。また、「金メダル以外メダルじゃない」を合言葉に五輪で国内最多48個の金メダルを獲得するなど、どこよりも勝ちにこだわってきた柔道界が「勝利至上主義」の是正に動き出したことへの驚きも多かった。小学生のころの苦い思い出として、他競技のスポーツ少年団でミスしたら殴られるなどして、「練習に行きたくなくて泣いていた」というツイートもあった。
「対戦相手をののしる親」「コンニャクで6キロ減量」
全柔連によると、この大会では、勝利にこだわるあまり、組み手争いに終始する試合が散見されたという。階級が2階級にしか分かれていないため、体重差の大きい危険な対戦もあり、また、成長段階の子どもに無理な減量を課す例、試合中に指導者や保護者が審判に罵声を浴びせる例も見受けられたという。幹部は「保護者が、自分の子どもの対戦相手をののしる例もあった。このままでは子どもにしわ寄せがいく。いったん止めようとなった」と話す。