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村田諒太に勝機は…? ゴロフキンと拳を交えた淵上誠と石田順裕の“証言”「計量時にこれはヤバイと」「石で殴られているかのよう」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byGetty Images
posted2022/04/07 11:02
石田順裕さんが「別格」と語るゲンナジー・ゴロフキン(右)とサウル“カネロ”アルバレス。2度目の対戦は判定2-0でカネロに軍配が上がったが、多くのファンや識者がジャッジに異論を唱えた
石田順裕の証言「カネロとゴロフキンは別格」
もう一人、ゴロフキンに挑戦したのが当時37歳の石田順裕さんだ。2013年3月30日、舞台はモナコのモンテカルロで、ゴロフキンは7度目の防衛戦だった。石田さんは元WBAスーパー・ウェルター級暫定王者で、11年には海外進出をはたし、世界ミドル級4位のプロスペクト、ジェームズ・カークランド(米)を初回TKOで粉砕して名前を上げた。その後は元2階級制覇王者のポール・ウィリアムス(米)、WBOミドル級王者のディミトリ・ピログ(ロシア)に敗れたものの、世界のトップレベルを肌で知る実力者だった。
「最初に試合のオファーがあったとき、マネージャーが勝てないと考えて断ったんです。でも自分はチャンスだと思いました。積み上げてきたものに自信がありましたし、勝負になると思った。だからやらせてほしいと」
身長187cmの石田さんはゴロフキンよりも10cm近く長身だが、ゴロフキン戦にあたっては「アウトボクシングをしても勝てない。泥仕合にしよう」と考えた。体をくっつけたり、腕を絡ませたり、クリンチしたり。混沌とした展開にしてゴロフキンのペースを乱そうとしたのだ。
ところが――。
「相手とのスペースがずっとつぶせませんでした。体の力が突き抜けて強かった。ジャブもノーモーションで見えない。こちらが接近しようとして頭が突っ込んでしまったこともありますけど、気がついたらジャブをもらっているという感じです。打ち分けもうまくて、ジャブに気を取られていると左フックが飛んでくる。しかもみんな石で殴られているかのようなパンチなんです」
石田さんは果敢にワンツーを打ち込んだり、ゴロフキンの打ち終わりに左フックを合わせたりしたものの、ゴロフキンは接近を許してくれなかった。3回、ゴロフキンの豪快な右フックを食らった石田さんはキャンバスにバッタリと倒れて試合は終わった。
石田さんは先に挙げた選手以外にも、ピーター・クイリン(米=WBOミドル級王者)、デニス・レベデフ(ロシア=WBAクルーザー級王者)、いまをときめくS・ミドル級4団体統一王者のサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)らとスパーリングをしたことがある。
「別格だと思ったのはカネロとゴロフキン。他の選手はある程度勝負になりましたけど、あの2人は相手にならなかった……」