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サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
中村憲剛が「ベトナム戦だけで選手を評価するべきではない」と語るワケ… W杯決定後の“燃えつき現象”は自身の経験と「まったく同じ」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/04/01 17:05
引き分けに終わった3月29日のベトナム戦。キャプテンの吉田麻也は試合終了のホイッスルと同時にピッチに座り込んだ
田中はダブルボランチでも守田とふたりで後ろに並ぶ必要はない。守田に後ろを任せて自分が出ていく、という判断を下して積極的に得点を取りにいきました。南野はトップ下の位置から立ち位置を変えることで、相手の守備を困らせていました。2人とも相手の状態を見てプレーをしたわけです。守田はその2人をみながらアンカー的な役割を担い、水を漏らさないように努めていました。
VARで取り消された得点シーンも、三笘からパスを受けた田中は上田綺世へワンタッチでクサビを入れ、そのまま相手の懐へもぐりこんでフィニッシュしています。狭いエリアでしたが、ワンタッチで出して入っていく動きによって、相手は瞬間的に対応できず、シュートまで持っていくことができました。あのタイミングでワンタッチが入ることで攻撃に緩急が生まれ、スピードが急に変化することで相手の守備陣形を崩すことにつながります。ただ、うまくいったシーンは良いのですが、意図が合わなかったりミスも出ていたりしたので、そこは精度を求めたいところです。
選手交代後に攻撃のテンポが上がった理由とは
選手交代後の変化としては、相手の運動量が落ちたにせよ、攻撃のテンポが上がったように見えました。
相手の守備の立ち位置を見て、自分が前を向くために相手に届かないポジションを取り、前を向くべきところで向く。また、出し手もそのタイミングで的確にボールをつける。出せるのに出せない、狭いから出さないではなく、狭いライン間で瞬間的にポジションをとった上田や南野らに、パスが入るようになりました。
ベトナムからすると、狭く設定しているはずの自分たちの間にパスを通されるので、さらに中を締めなければいけない、そうすると伊東純也と三笘の両サイドがそれまでよりも空く。彼らの仕掛けから、さらに押し込むことができる。ライン間に入って、そこから先でミスが起こったとしても、相手を「集結させられている」状態に追い込んでいます。ペナルティエリアに押し込んでいるので、前半のようなカウンターは受けにくくなりました。
先に述べたように、前半の攻撃がジャブになったのは、後半のベトナムの運動量低下を見れば明らかです。日本の攻撃の変化も相まって、ベトナムをさらに自陣深くで守らざるを得ない状況に立たせていました。
前半の柴崎から原口へのパスのようなつながりを確信的にできる選手が、受け手も出し手も増えていました。それによってベトナムにカウンターパンチを放つ余裕を与えなかった。そこが前半との大きな違いです。<後編へ続く>