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ドーピング問題のワリエワは“見世物”にされていなかったか? バッハ会長の「こんな冷たい態度」発言に見る責任転嫁と選手軽視

posted2022/03/03 06:00

 
ドーピング問題のワリエワは“見世物”にされていなかったか? バッハ会長の「こんな冷たい態度」発言に見る責任転嫁と選手軽視<Number Web> photograph by JMPA

高梨のスーツ規定違反にワリエワのドーピング疑惑。2人の「不可解な涙」をはじめとして、北京五輪は最後まで話題に事欠かなかった

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プチ鹿島

プチ鹿島Petit Kashima

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 2月のスポーツ新聞時評です。

 プーチンのせいで北京冬季五輪は遠い出来事のようになってしまいました。しかし今振り返るからこそ、興味深い記事もあります。いくつかご紹介します。

 まず五輪開会式直後の日刊スポーツ。『沙羅ちゃんイケる』『きょう金イケる』(2月5日)。

 ジャンプの高梨沙羅に期待を寄せる記事です。

《雪印メグミルクスキー部総監督の原田雅彦氏(53)は会場のジャンプ台が、得意の山形・蔵王のものに似ていると指摘。「沙羅ちゃんイケる」と、日本女子ジャンプ界初の五輪女王の座を期待した。》

 紙面からはワクワク感しか伝わってきません。しかしふと隣を見るとこんな記事が。北京五輪「知っ得!ガイド」というコーナーで『スーツの疑問』。

スーツ規定問題を予測していた(?)スポーツ紙面

 ジャンプ選手のスーツの下はどうなっているのかというテーマ。

 選手は防寒するために重ね着したいところだが許されていない。長袖はダメ。袖を引っ張って脇の下部分の面積を広げ、空気を受けて距離を伸ばすことがないようにしているからです(ムササビやモモンガをイメージしてください)。

《パンツに関しても、股下部分の面積を広げないようにしている。股下は試合で飛ぶ前にテストされるくらい厳しい。》

 ああ、今から読むとザワザワしかしない。「高梨沙羅」と「スーツ」が早々にセットになっていた。

 ご存知のように高梨沙羅選手はスーツの規定違反で失格となった(ジャンプ混合団体・1回目)。これにはもっと科学的な方法で検査しないといけないという指摘も。

《ジャンプ関係者も「検査員のさじ加減ひとつ。厳しさが違う、誰が検査対象になるか分からない、“ロシアンルーレット”的な要素はある」と話した。》(スポーツ報知2月9日)

  ロ、ロシアンルーレット! ここも今から読むとザワザワします。ロシアといえばこの話題がありました。

『転倒したワリエワを叱責 際立つコーチの異様さ「なぜ諦めたの?」』(デイリースポーツ2月19日)

 ドーピング問題が発覚し、17日の演技で転倒を繰り返したカミラ・ワリエワ(15歳)がリンクから戻った際に「どうして戦うのをやめたの?」と叱責するコーチ。その指導の異様さを指摘している記事だ。

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