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平野歩夢「THA BLUE HERBが好き」は必然だった? ヒップホップとスポーツの“複雑な蜜月関係”《米スーパーボウルも大盛況》

posted2022/03/03 11:01

 
平野歩夢「THA BLUE HERBが好き」は必然だった? ヒップホップとスポーツの“複雑な蜜月関係”《米スーパーボウルも大盛況》<Number Web> photograph by Asami Enomoto/JMPA

競技中にイヤフォンでTHA BLUE HERBを聴いていたことを明かした平野歩夢。五輪の金メダリストでは、マラソンの野口みずきもヒップホップ好きとして知られている

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下井草秀

下井草秀Shu Shimoigusa

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Asami Enomoto/JMPA

 北京五輪の男子ハーフパイプで平野歩夢が金メダルを獲得したその日の晩、櫻井翔が『news zero』(日本テレビ系)において行ったインタビューが話題を呼んだ。

 正念場となる3本目の演技の直前、イヤフォンで聴いていた音楽は何だったのかという問いに対し、平野は、THA BLUE HERBの楽曲だと答えたのだ。嵐でラップを一手に引き受けていたことでもわかるように、かねてからヒップホップに通暁する櫻井は、その言葉に対し「僕も大好きです」と反応。その後の対話はだいぶ弾んだのであった。

 THA BLUE HERBは、北海道を拠点とするヒップホップユニットだ。現在の構成メンバーは、ラッパーのBOSS THE MCとトラックメイカーのO.N.O、ライブDJのDJ DYEという3人。

 1997年の結成以来、メッセージ性の強いシリアスな歌詞と、アンビエントとも呼び得るクールなバックトラックからなるそのコアな音楽性は、ヒップホップリスナーの絶大な支持を受けてきた。東京偏重だった当時のシーンに対して、地方である札幌から異議申し立てを行うそのスタンス、そしてインディペンデントに徹した活動スタイルは、後進に大きな影響を与えている。

“横乗り系”スポーツは音楽との親和性が高い

 ところで、平野と櫻井の感動的なやりとりをまとめたニュースのコメント欄には、ちょっとトンチンカンな感想が散見された。

「これは嬉しいね。リンダリンダが大好き」

「ブルーハーツかと思ったら違った」

 まあ、しょうがない。実際、THA BLUE HERBの命名の由来のひとつにザ・ブルーハーツがあるらしいのだから。

 考えてみよう。例えば、若手騎手が「出走前にはザ・ウィークエンドを聴いてます」と言ったら、年配の競馬愛好者の脳裏にはカナダ人ミュージシャンの存在など微塵も浮かばず、「ああ、『走れコウタロー』ね」と思って微笑むはずだ。

 もしもロッテに入団した新人が「aikoが好きです」と語ったなら、かつて川崎球場に通い詰めていたような古参のファンは、「令和のパ・リーグに、愛甲猛を敬愛する破天荒な若者がいるなんて頼もしいな」などとピントのずれた感心をするだろう。

 本題に戻るとしよう。スノーボードやスケートボードといったエクストリームスポーツは、そもそも音楽との親和性が高い。主にアメリカ西海岸を舞台として撮影されたスノボやスケボーのビデオには、パンク、ヘヴィーメタル、ヒップホップといった多彩なジャンルの音楽がBGMとして使われており、これらを繰り返し観続けたスケーターが、楽器を手に取ったりマイクを握ったりするようになるケースも多い。

【次ページ】 ホッケージャージを好んで着用していたラッパーたち

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