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ワリエワのエテリコーチと真逆?「勝ち負けではなく子どもたちの幸せを」北京五輪メダル1位ノルウェーの“嫉妬と無縁な育成”とは
posted2022/02/24 17:00
text by
フローラン・ダバディFlorent Dabadie
photograph by
Getty Images
冬季五輪、ノルウェーが平昌に続いて連覇達成! 今大会のメダル獲得数は37個、金メダル獲得数は16個と、どちらの数も、スポーツ大国のアメリカ(総数25個、金8個)、ロシア(ROC/総数32個、金6個)、ドイツ(総数27個、金12個)などを突き放し圧巻の1位でした。
ノルウェーは北欧にある人口500万人の小さな国ですが、冬のスポーツでは強豪中の強豪なのです。スキー発祥の地であり、国技はバイアスロン、アルペンスキー、スキージャンプ。そのため、ノルウェーでは最も人気のある日本人スポーツ選手というと、今も葛西紀明の名前がまっさきに挙がります。「レジェンド」と呼ばれ、2017年には『ノリアキ』という詩集が出版されたほどです。
首都オスロの冬季平均気温は-3度。さらに夏自体が6~8月と短く、その時期でも平均気温15度です。1年中ウインタースポーツの練習ができるのは大きな利点ですが、その点ではオーストリアやスイスにも夏のスキー場があり、冬のスポーツ文化では負けていません。むしろ、後者の方が人口も競技人口も多いです。
スポーツの最先端練習施設を導入できたワケ
では、なぜノルウェーは冬の最強国となれたのでしょうか。
歴史を遡ると、カナダのカルガリーで行われた1988年大会の失敗(メダル5個)は、ノルウェーにとって大きなトラウマになり、構造改革をもたらすターニングポイントとなりました。
1994年に自国で開催するリレハンメル五輪に向け最先端インフラに投資し、国立スポーツ科学センター(オリンピアトッペン)という練習施設を首都オスロなど全国各地に導入しました。冬のスポーツ文化が政府に支援されている証ですが、その支援の背景にあるのはスポーツの博打です。ただネガティブなイメージとはほど遠く、ノルウェーのスポーツ・ギャンブリングは政府に運営され、利益がスポーツ界に還元されています(64%がスポーツ・チームへ、残りは育成やチャリティ財団へ)。
「全国民にとってヘルスケアは無償なんです」
また、ノルウェーのスポーツ環境と育成事情にも驚きます。
「私たち全国民にとって、ヘルスケアは無償なんです。ジュニアもプロ選手も、アスリートは誰でも最高のスポーツ医学に守られています」
とオリンピアトッペンの責任者であるトーレ・エブレベが説明します。
ノルウェー特有の育成法も話題を集めています。