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「あなたが佐伯さんですか。てっきり、どなたかの奥様かと」Jリーグ常勤理事が語る「圧倒的に男性社会」な日本スポーツ界の課題 

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宇都宮徹壱

宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya

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posted2022/02/20 11:02

「あなたが佐伯さんですか。てっきり、どなたかの奥様かと」Jリーグ常勤理事が語る「圧倒的に男性社会」な日本スポーツ界の課題<Number Web> photograph by AFLO

Jリーグの佐伯夕利子常勤理事は、2003年にスペイン3部プエルタ・ボニータの監督に就任。その後もスペインで指導者としてのキャリアを歩んでいる

日本のスポーツ界は「圧倒的に男性社会」

 私がスペインで指導者を志した当時、自分には不利な条件がいくつもあると信じきっていました。外国人で、しかもサッカーが盛んではないアジアの出身であること。女性であることと、年齢が若いこと。そんな自分が、果たして指導者ライセンスを取得できるのだろうか?

 それで、現地のライセンス協会に電話をしたんです。ダイレクターの回答はこうでした。「外国人というのは、こうやって電話で僕と会話ができているんだから、まったく問題ない。年齢についても、16歳以上から受講できるからOK。それと『女性なんだけど』というのは、質問の意味がよくわからない」って(苦笑)。

 残念ながら、日本のスポーツ界というのは、圧倒的に男性社会です。以前、とあるパーティに招待していただいたんですが、私以外は全員が男性。しばらくして、ある大御所の方から「あなたが佐伯さんですか。てっきり、どなたかの奥様かと思いました」って言われました(笑)。「女性=誰かの妻」というのは、まさに認知の歪みと言わざるを得ないですよね。

 もちろん私が暮らしているスペインでも、かつては男尊女卑と言えるような文化はありました。特に地方都市に行くと、そうした傾向が強かったように感じます。でも、ちょうど私が移住したタイミングでEU統合があって、そこからスペインという国が劇的に変化していったんです。とりわけ変わったのが、国民のマインドでした。

 それまでスペインでは、国外に出たことがある人が限定的でした。ところがヨーロッパが統合された瞬間、国境がなくなったことで、スペイン人の間に「自分はヨーロッパ人なんだ」という自覚が生まれたんです。そして世界に目を向け、多様性を受け入れるようになりました。「これだけ変われるんだ!」とびっくりするくらい激変したのが、EU統合以降のスペインです。

 この30年の間で、ジェンダーギャップに関する考え方も変わりましたね。意外に思われるかもしれませんが、スペインは世界で一番、女性閣僚の比率が高いんですよ。フィンランドよりも上。それくらい、人権リテラシーの高い国になったんですよ。スペインという国を、レアルやバルサだけで理解しようとするのは、ちょっと危険ですよね(笑)。

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