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JリーグPRESSBACK NUMBER
「日本の人権リテラシーは極めて低い」Jリーグ常勤理事が“9000字超の長文”で「ハラスメントとの決別」を宣言した理由とは
posted2022/02/20 11:01
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph by
Tetsuichi Utsunomiya
Jリーグ公式noteにて「スポーツ現場におけるハラスメントとの決別宣言」という記事がアップされたのは1月18日20時3分のことであった。執筆者はJリーグの佐伯夕利子常勤理事である。
9000字を超える長文だったが、何度もうなずきながら一気に読んでしまった。このタイミングで書かれたのは、昨年末に相次いだパワーハラスメントの懲罰決定(12月24日に東京ヴェルディ、30日にサガン鳥栖)を受けてのものである。
この記事に、私は2つの点で興味を抱いた。まずnoteという、一般にもなじみ深いプラットフォームが用いられたこと。そして発信者が、佐伯理事だったこと。スペインでの長い指導経験を持つ彼女だからこそ、日本の指導現場でのハラスメントを「人権侵害」と断じることができた。その事実を、われわれは噛みしめるべきである。
普段は自宅のあるビジャレアルから、オンラインでのミーティングに参加し続けている佐伯理事。残り少なくなった任期を日本で全うするべく、1年ぶりに帰国して、自主隔離中というタイミングで話を聞くことができた。Jリーグとして「ハラスメントとの決別」を宣言するに至った背景について、さっそく彼女自身の言葉で語っていただくことにしよう。(全2回の1回目/後編へ)
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ヴェルディや鳥栖の一件は「氷山の一角に過ぎない」
われわれJリーグの役員には、360度評価というものがあります。自分たちの次の年の目標を設定するんですけれど、2022年に立てた私の個人目標は「危機感を大切にする」でした。何に対しての危機感かというと2つあって、ひとつが「世界の土俵に乗る」ということ、そしてもうひとつが「人権問題」です。
Jリーグという組織で考えた場合、やっぱり競技力を高めることが最重要課題のひとつですけれど、競技力を高める一番大事なところは「指導環境」だと思います。そこで競技をする人。競技者を支援する人。すべての人が心地よく、楽しく、明るく、前向きで幸せな状態が、やっぱり指導環境としての理想形だと思います。