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JリーグPRESSBACK NUMBER
なぜ岩政大樹(現コーチ)は名門・鹿島からタイに移籍したのか?「ほかのOBと比べたら、僕の色は薄く感じられるだろうと…」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byGetty Images
posted2022/02/19 11:01
昨年12月上旬の取材後、岩政大樹は鹿島アントラーズのトップチームコーチに就任。2月13日の「いばらきサッカーフェスティバル」では監督代行としてチームを率いた
――2018年に取材したときに、「指導者になることがゴールではない」という話をされていました。
現役時代は指導者になりたいという気持ちが100%だったわけではないんです。実際に指導者ライセンスを取りに行き、自分がどういう立場をとれるかを見極めてから決めようと思っていました。引退して、S級ライセンスも2年という早さで取得して、「日本サッカー界で指導者としてやれることがある」ということを実感できたので、40代は指導者として生きていこうと思っています。
今、世界のサッカーは、「戦術的な視点でどれだけサッカーを語れるか」が監督に求められる時代です。戦術をしっかりデザインでき、チームに落とし込める日本人の指導者がまだ少ないことが、僕が活きる道だと考えました。そういった観点がJリーグには足りない、ということをサポーターも含めて多くの人が気づいている。そこへ自分が入っていけそうな気がするので、チャレンジしてみたいなと考えています。
――Jリーグへと?
まだ何かが決まったわけではないけれど、その道へ進みたいとは思っています(※インタビュー後に鹿島アントラーズのトップチームコーチ就任が発表された)。
なぜ鹿島からタイリーグへと移籍したのか?
――選手時代も解説者としてもそうですが、岩政さんは周囲との違いを際立たせることに長けていると感じます。それは指導者としても同じですか?
人と違うように見せることによって、こういった絶対数が少ない仕事を得られると思うんです。鹿島を離れる決断をしたときも、僕の2個上には小笠原満男さん、曽ケ端準さん、中田浩二さん、本山雅志さんがベテランとして健在でした。当時「きっと彼らは引退まで鹿島にいるだろう。そのとき僕も同じように鹿島で引退を迎えたら……」と考えました。彼らと比べたら僕の色は薄く感じられるだろうと。だから僕は移籍を決めました。
――しかも、タイリーグへと移籍しましたね。
はい。まだ鹿島でやれるという自信もあったので、J1の下位チームやJ2という選択もできたと思います。東南アジアならその後にでも移籍できるかもしれないけれど、一気にすっ飛ばしてタイへ出ました。そうすることで、人と違う経験ができると考えたから。いざ行ってみたら、いろんなことに順応できたし、周囲に指示も出せた。ハイレベルでプレーできる余裕があったからこそ、得られたものも大きかったと感じています。
岡山へ行ったときもそうですね。監督と一緒に選手全体をマネージメントする役割も与えてもらえた。それぞれの人間にはそれぞれのキャリアがあり、いろんな風景を見てきたはずです。でも僕にはほかの鹿島のOBとは違う景色が見えているはずだと自負しています。