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「こんなに弱くなりやがって」“時代と噛み合わなかった男”石渡伸太郎が若い格闘家に贈る提言「朝倉兄弟のように自ら発信すべき」 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2022/02/12 17:01

「こんなに弱くなりやがって」“時代と噛み合わなかった男”石渡伸太郎が若い格闘家に贈る提言「朝倉兄弟のように自ら発信すべき」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2013年6月、石渡伸太郎は『VTJ 2nd』で堀口恭司と対戦。結果は5ラウンド41秒でKO負けだったが、この試合を石渡のベストバウトにあげるファンも多い

トレーナーとして“お騒がせ男”平本蓮を指導中

 石渡はトレーナーとしてすでに活動中ながら、日本の格闘技界全体を俯瞰して見ている。

「いまは(大会として)RIZINが一番盛り上がっていることは間違いない。選手であれば、誰でも出たい。それは(選手たちがそれまで拠点として活動していた)どの団体であっても止められるものではない」

 各団体とは修斗、パンクラス、DEEPなど既存のプロモーションや団体を指す。石渡も新人時代は修斗に育てられ、パンクラスで王者となり、RIZINで覚醒した。そうであるがゆえに、選手には自分を育ててくれた団体のプライドを胸に抱きながらRIZINで闘ってほしいと願う。

「修斗やパンクラスで培った下地があるからこそRIZINでの闘いが成立する。やっぱり(新人の養成や発掘の場である)RIZIN TRIGGERみたいな大会が出てくると、『修斗やパンクラスとどこが違うの?』みたいな声も出てくる。自分みたいにパンクラスの王者として乗り込むなら、個人としてではなく、『パンクラスの俺がRIZINで闘う』という意識を強く持ってほしい。そうでないと、RIZIN以外の団体の存在意義が薄くなってしまう。

 ただ、若い選手がRIZINという大きな舞台をキャリアの早い段階で経験できるというありがたい一面もある。そこでチャンスを掴んで、そのままトップ戦線まで食い込める選手もいずれは出てくると思いますが、それはあくまでもほんの一握り。大半の選手はそこで勘違いしてしまう。そうならないためにも、自分の主戦場とする団体で王者やトップランカーになること、下地を作ることが大切なんです」

 念を押すようだが、もう石渡がMMAの舞台に立つことはない。その代わりブラジリアン柔術は競技者として続けようと考えている。

「いまは一応茶帯。どこまで一生懸命にやるかわからないけど、試合には出てもいいかなと思っています。MMAを始めてからMMAの試合以外は出たことがないんですよ。(専門じゃない競技で)負けるのは当たり前なんだけど、実際に負けたら恥ずかしいじゃないですか」

 そう語ると、石渡は現役時代と変わらぬ人懐っこそうな微笑を浮かべた。

 3月6日の『RIZIN LANDMARK vol.2』で鈴木千裕と対戦する平本蓮は、2月2日の会見で、武者修行先の米国から帰国後に石渡の指導を受けていることを明かした。

「基本的な技術面はCAVEで石渡さんに見てもらっています。凄く相性のいいトレーニングができて、日本に帰ってきてもだいぶレベルが上がっている自信はありますね」

 石渡の熱き想いは伝承され始めている。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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